こんにちは!19番ホール研究所のthe19thです。
パー5のセカンドショット、ティーショットで少し距離をロスしてしまった長いパー4。「ここでフェアウェイウッドがクリーンに当たれば、一気にチャンスになるのに…!」なんて場面、ゴルフをやっていると本当によくありますよね。ドライバーの次に飛距離を稼げる、あの爽快な打球音と弾道はまさにゴルファーの夢。その一方で、地面から直接打つクラブとしては最も長く、扱いが難しいことから「どうも苦手で当たらない」「ここ一番でトップやダフリばかり出てスコアを崩してしまう」という悩みを抱えている方が非常に多いのも事実です。
何を隠そう、私もFWがまったく当たらず、バッグのお飾りになっていた時期が長くありました。フェアウエイウッド打ち方には、アイアンとは全く異なる特有のコツがあり、同じ感覚で振ってしまうと、なかなか良い結果に結びつかないんですよね。特に、払い打つという独特の意識やソールを滑らせる感覚、そしてその土台となる正しいアドレスやボール位置など、押さえるべき基本がいくつも存在します。また、頑固なスライスに悩んでいたり、そもそもボールに当たる確率、つまりミート率が上がらないという根本的な課題を感じている方もいらっしゃるかもしれません。さらに、パワーに頼れない女性やシニアゴルファーにとっては、効率的な体の使い方を覚えることが上達の鍵となります。この記事では、そんな手強いフェアウェイウッドの悩みを根本から解決するために、絶対に外せない基本的な考え方から、具体的なミス撲滅法、スコアに直結する練習ドリル、さらにはコースでの賢い使い方まで、私の経験も交えながら、網羅的に掘り下げていきたいと思います。これを読めば、あなたのフェアウェイウッドが「苦手クラブ」から「最も頼れる武器」に変わるはずです。
- FWをクリーンに捉えるための正しいアドレスとボール位置
- ソールを滑らせる「払い打ち」の具体的なスイングイメージとコツ
- ダフリ、トップ、スライスといった三大ミスの物理的な原因と即効性のある直し方
- スコアメイクに直結する番手選びの考え方と効果的な練習ドリル
フェアウエイウッド打ち方の基礎とミス克服法
それでは早速、フェアウェイウッドを自在に操るための土台作りから始めていきましょう。どんなに難しい応用技術も、しっかりとした基礎がなければただの砂上の楼閣になってしまいますからね。ここでは、全ての基本となる「構え方(アドレス)」から、FW特有の「スイングイメージ」、そして多くのゴルファーを長年悩ませている代表的なミスの原因とその具体的な対策について、一つずつ丁寧に解説していきます。ここをじっくり理解して実践するだけで、ボールにクリーンヒットする確率が驚くほど上がることをお約束します。
アドレスとボール位置が基本の鍵
フェアウェイウッドが上手く打てない原因を探っていくと、その実に8割以上は、実はスイングそのものの問題ではなく、スイングを始める前の「アドレス(構え方)」にあると言っても過言ではありません。打ちたい気持ちが先行して、構えがおろそかになっていませんか?まずはここを徹底的に見直してみましょう。
なぜスタンス幅が重要なのか?
FWのアドレスでまず意識したいのがスタンスの幅です。基準としては、ドライバーよりは少しだけ狭く、ミドルアイアンよりは明らかに広い「自分の肩幅の1.2倍から1.5倍」あたりがスイートスポットになります。なぜこの広さが理想的なのかというと、FWはシャフトが長く、スイング中に発生する遠心力が非常に大きいからです。スタンスが狭すぎると、この強大な遠心力に体が耐えられず、軸が左右にブレる「スウェー」という動きを引き起こし、打点が全く安定しなくなります。逆に広すぎると、今度は下半身がロックされてしまい、スムーズな腰の回転を妨げます。結果、上半身だけで振る「手打ち」になりやすく、飛距離をロスするだけでなく、あらゆるミスの原因となってしまうのです。自分の体格に合った、どっしりと安定した土台を作ることが、ナイスショットへの第一歩ですね。
スイング軌道を決定づけるボール位置
そして、アドレスにおける最重要項目がボールを置く位置です。これは、あなたがどのような軌道でボールを捉えたいかを決定づける、非常に戦略的な要素です。FWの場合、ドライバーのようにアッパーブロー(上昇軌道)で打つわけでも、アイアンのようにダウンブロー(下降軌道)で打ち込むわけでもありません。スイング軌道の「最下点」か、そのほんの少し手前で、芝を擦るようにレベル(水平)に捉えるのが理想です。そのために、基本となる3番ウッド(3W)であれば「左足かかと線上から、ボール1個か2個ぶん内側(右足寄り)」にセットするのが現代のセオリーとされています。
最後に、手の位置(ハンドポジション)もチェックしましょう。基本的には、クラブを吊るしたときに自然に腕が下りる「左股関節の前」あたりがニュートラルなポジションです。手がボールよりも極端に前に出る「ハンドファースト」は、FWのロフトを殺してしまい、ボールが全く上がらない原因になります。逆に手がボールより後ろにある「ハンドレイト」は、すくい打ちを誘発し、ダフリやトップの温床となるので注意が必要です。正しいセットアップができて初めて、理想のスイングが可能になるということを忘れないでくださいね。
払い打つ意識でソールを滑らせるコツ
「フェアウェイウッドは、アイアンのように打ち込むのか?それとも、地面を掃くように払い打つのか?」これはゴルフ界における長年の論争テーマの一つでした。しかし、近年のハイスピードカメラによるスイング解析技術の進化によって、その答えはほぼ一つに集約されつつあります。それは、「結果的に、ごく緩やかなダウンブローでボールを捉えるために、意識としては払い打つ」という考え方です。
どういうことかと言うと、アイアンのように上から鋭角に「ガツン!」と打ち込む意識は全く必要ない、ということです。なぜなら、フェアウェイウッドには「幅の広いソール」という、最大の武器が備わっているからです。このソールが、まるで船の底のように芝の上を滑ってくれる(スキッド効果)ため、多少インパクトが手前に入っても、地面に突き刺さることなく、ヘッドが前に進んでボールを拾ってくれるのです。この機能を最大限に活用しない手はありません。
「ホウキで掃く」究極のスイングイメージ
このソールを滑らせる感覚を身につけるための最高のイメージが、「ボールの手前の芝を、大きなホウキでサッと掃く」というものです。ボール自体を打とう、上げようとすると、人間は無意識に右肩を下げて、下からすくい上げるような動きをしがちです。これこそが、最下点がボールの手前に来てしまう最悪の動きであり、あらゆるミスの根源となります。そうではなく、ボールはあくまでスイング軌道の通過点にあるだけ。意識するのは、クラブヘッドを地面すれすれに、低く、長く動かし続けることです。アドレスで作った背骨の軸を中心に、体をコマのように回転させ、その遠心力でクラブが振られる感覚が掴めれば、自然とヘッドはソールから地面に接地し、芝の上を滑りながらボールを捉えてくれます。
この「払い打つ」意識、つまり「ソールを滑らせる」感覚が体感できるようになると、フェアウェイウッドに対する恐怖心は一気に消え去ります。多少の打点のズレはクラブが許容してくれるという安心感が、力みをなくし、よりスムーズなスイングを生み出すという好循環に入るのです。練習場のマットの上で、「シュッ」とソールが擦れる音を確認しながら素振りをするだけでも、この感覚を養うのに非常に効果的ですよ。
ダフリの原因は右足体重と手首の解け
フェアウェイウッドでゴルファーが経験する最もがっかりするミス、それが「ダフリ」ではないでしょうか。完璧な当たりを期待して振り抜いたのに、ボールの手前の地面を「ドンッ!」と叩いてしまい、ボールは数ヤードしか飛ばない…。この悲劇の主な原因は、物理的に分析すると、ほぼ2つの動きに集約されます。
- インパクト時の「右足体重」
これがダフリの最大の原因です。飛ばしたいという気持ちが強まると、人は無意識に右足に力を溜め込み、そのパワーをボールにぶつけようとします。しかし、インパクトの瞬間に体重が右足に残ったままだと、スイングの軸全体が右に傾いてしまいます。その結果、スイングの円運動の最下点が、ボールのはるか手前に来てしまい、必然的に地面を叩いてしまうのです。プロゴルファーがインパクトで左足一本で立てるほど体重移動しているのとは、全く逆の動きですね。 - 手首のコックが早く解ける「アーリーリリース」
これも力みが引き起こす典型的な悪癖です。トップ・オブ・スイングで作った手首の角度(コック)は、本来インパクトの直前までキープされることで、ヘッドスピードを最大化させる「タメ」の役割を果たします。しかし、早くボールに当てたい、強く叩きたいという意識が働くと、ダウンスイングの早い段階でこのコックが解けてしまいます。これをアーリーリリースと呼びますが、手首が解けるとクラブヘッドが想定より早く地面に到達するため、ボールの手前をダフることになるのです。
ダフリ撲滅のための即効ドリル
では、どうすればこの右足体重とアーリーリリースを防げるのでしょうか。意識改革だけではなかなか治らないのが現実です。そこで、強制的に正しい動きを体に覚えさせるドリルが有効になります。
また、視覚的なアプローチも非常に効果的です。多くのゴルファーはボールの真上や右半分を見て構えがちですが、これだと意識が右に残りやすくなります。試しに、ボールの「左側面」あるいは「ボールのターゲット方向の芝」に焦点を合わせてみてください。それだけで、スイングの最下点を自然とターゲット方向にシフトさせる効果があり、クリーンなインパクトの確率が格段に上がりますよ。
トップを防ぐ前傾キープと懐のスペース
ダフリと対をなす代表的なミスが「トップ」です。クラブヘッドがボールの上半分を叩いてしまい、「カチン!」という音と共に、ライナー性の低い球や、無残なチョロになってしまう現象ですね。これもまたスコアを大きく崩す原因となりますが、トップの物理的な原因は非常にシンプルで、そのほとんどがインパクトの瞬間に「体が起き上がってしまう」ことに起因します。
では、なぜ体は起き上がってしまうのでしょうか?これもまた、いくつかの複合的な要因が考えられます。
窮屈なアドレスが生む「伸び上がり」
最も多い原因が、アドレス時にボールに近づきすぎていることです。ボールとの距離が近すぎると、ダウンスイングでクラブが下りてくるための物理的なスペース、いわゆる「懐(ふところ)」がなくなってしまいます。腕やクラブがスムーズに通る道がないため、体は無意識にそのスペースを作り出そうとして、上体を起こす(伸び上がる)動きをしてしまうのです。これは、自己防衛本能のようなもので、意識だけで抑えるのは非常に困難です。まずは、アドレス時にグリップエンドと自分の体の間に「こぶしが1.5個から2個」入るくらいの適切なスペースを確保できているか、常にチェックする習慣をつけましょう。この適度な空間こそが、腕がリラックスして振れる生命線となります。
ヘッドアップは起き上がりの引き金
もう一つの大きな原因が、ゴルファーなら誰でも経験のある「ヘッドアップ」です。打った球の行方が気になりすぎるあまり、インパクトが終わる前に顔を上げて目標方向を見てしまう動きですね。頭が上がると、それに連動して背骨の軸も伸び、肩のラインも上昇します。その結果、スイング軌道全体がアドレス時よりも高い位置を通ることになり、ボールの頭を叩いてしまうのです。これを防ぐためには、強い意志が必要です。
スライスしないインサイドからのアタック
フェアウェイウッドで気持ちよく振り抜いたつもりが、ボールは力なく右へ右へと曲がっていく…。この「スライス」は、特にアベレージゴルファーにとって永遠の課題とも言えるミスです。スライスのメカニズムは、ご存知の通り、クラブの軌道がターゲットラインに対して外側から内側へ抜ける「アウトサイドイン」になり、なおかつ「フェースが開いた状態」でインパクトを迎えることで発生します。
特にフェアウェイウッドの場合、ボールを高く上げたいという潜在意識が強く働き、無意識のうちにフェース面を空に向けるような(開く)動きをしながら、上からボールをカットするように打ちにいってしまう傾向があります。これでは、ボールに大量のサイドスピンがかかり、飛距離をロスするだけでなく、OBのリスクも高まってしまいます。
スライス軌道を矯正する物理的ドリル
このアウトサイドイン軌道を修正するためには、クラブが体の内側(インサイド)から下りてくる感覚を体に染み込ませる必要があります。これも意識だけではなかなか治らないため、物理的な制約を設けたドリルが非常に有効です。
- ヘッドカバードリル:練習場で、ボールの飛球線後方、少し外側にヘッドカバーやタオルなどを置きます。バックスイングではそれを意識せず、ダウンスイングでそのヘッドカバーに当たらないようにクラブを下ろしてくる練習です。これを避けるためには、クラブをインサイドから下ろすしかなく、強制的に軌道が修正されます。
- スティックドリル:アライメントスティックを2本用意し、1本はターゲット方向に、もう1本はボールと自分との間に、ターゲットラインと平行になるように置きます。このスティックよりも内側にクラブヘッドを通してくるイメージで振ることで、インサイドからのアタックが意識しやすくなります。
フェースを閉じる「右手の使い方」
正しいスイング軌道を身につけても、インパクトでフェースが開いていてはスライスは治りません。そこで重要になるのが「フェースローテーション」の感覚です。これを掴むのに最適なイメージが、「右手のひらとフェース面を一体化させる」ことです。
スコアアップに繋がるフェアウエイウッド打ち方
さて、フェアウェイウッドの基本的な打ち方と、代表的なミスの克服法を理解したところで、次はいよいよコースでスコアを叩き出すための、より実践的な活用術について考えていきましょう。ただ闇雲に振り回すだけでは、FWは時にスコアを崩す諸刃の剣にもなり得ます。同じフェアウェイウッドでも番手ごとに明確な役割があり、ゴルファーのタイプや状況によって意識すべきポイントも大きく変わってきます。自分に合ったクラブの選び方、賢い使い方、そして効果的な練習法を身につけて、フェアウェイウッドを本当の意味での「スコアメイクの武器」へと昇華させていきましょう。
3Wは飛ばすより運ぶクラブと心得る
アマチュアゴルファーのキャディバッグの中で、最もゴルファーの「欲」を刺激し、そして最も裏切る可能性を秘めたクラブ。それが3番ウッド、通称「スプーン」ではないでしょうか。ティーアップすればドライバー並みの飛距離を叩き出せるポテンシャルを持つ反面、地面から打つ際の難易度は全クラブの中でもトップクラスです。
なぜ3Wは難しいのか?
その難しさの根源は、そのスペックにあります。ロフト角が15度前後と非常に立っているため、ボールを空中に打ち出すための絶対的なヘッドスピードが要求されます。一般的に、ドライバーのヘッドスピードが秒速42メートル(HS42m/s)に満たないゴルファーの場合、3Wでは十分な打ち出し角とスピン量が得られず、ボールが上がりきらないままドロップしてしまう傾向があります。その結果、よりロフトのある5番ウッドの方がキャリーが出て、総飛距離でも上回ってしまう、という悲しい「逆転現象」が頻繁に起こるのです。さらに、シャフトが長いためミート率も下がりやすく、少しでも芯を外すと極端に飛距離が落ちるというシビアさも併せ持っています。
お助けクラブ7Wでグリーンを狙う
前述の通り、3Wが非常にシビアなクラブである一方、多くのアマチュアゴルファーにとってまさに「救世主」となり得るのが、5番ウッド(クリーク)、そして特に7番ウッドといった、ロフトが多めのフェアウェイウッドです。もしあなたが「ロングアイアンは苦手だ」「FWはいつもトップかダフリしか出ない」と感じているなら、この「お助けクラブ」があなたのゴルフを劇的に変えるかもしれません。
7Wがアマチュアに最適な理由
7Wがこれほどまでに推奨されるのには、明確な理由があります。
- 圧倒的な上がりやすさ:ロフト角が21度前後と、4番アイアンや一部のユーティリティに近いため、ボールが非常に上がりやすいのが最大の特徴です。自分でボールを上げにいく必要がないため、レベルブローに振るだけで、理想的な高弾道がオートマチックに打てます。
- ミート率の高さ:3Wに比べてシャフトが1インチ以上短くなるため、単純にクラブの操作性が向上し、ボールの芯に当てる確率(ミート率)が格段にアップします。
- グリーンで止まる性能:高弾道で飛んでいくため、ランが少なく、グリーンを直接キャリーで狙って止めることも可能です。これはロングアイアンではなかなか難しい芸当ですね。
- ラフからの脱出力:ソール幅が広く、重心が深いため、多少深いラフからでも芝の抵抗に負けにくく、ヘッドがスムーズに抜けてくれます。
近年では、男子のPGAツアープロでさえ、難しいロングアイアンの代わりに7Wや9Wといったハイロフトウッドをバッグに入れる選手が増えているほどです。これは、いかにこれらのクラブが実戦的で、スコアメイクに貢献してくれるかの証明と言えるでしょう。(参考:キャロウェイゴルフ公式サイト フェアウェイウッドテクノロジー)プロが使うくらいですから、我々アマチュアがその恩恵を受けない手はありません。
女性向けレッスンは大きなアークが鍵
女性ゴルファーがフェアウェイウッドを使いこなす上で、男性とは少し違ったアプローチが必要になることがあります。一般的に、女性は男性に比べて筋力が少ない一方で、関節の可動域が広く、体がしなやかであるという身体的な特徴があります。このアドバンテージを最大限に活かすことが、飛距離と方向性を両立させるための鍵となります。
力に頼らない「遠心力スイング」
飛距離を出したいという気持ちから、ついつい腕の力に頼ってボールを叩きにいってしまうのはよくあることですが、これは逆効果。力みはスイングを小さくし、ヘッドスピードをむしろ減速させてしまいます。女性ゴルファーが目指すべきは、筋力に頼るのではなく、クラブの重さと遠心力を最大限に利用した、ゆったりと大きな円を描くスイングです。
そのための最大のポイントが、できるだけ大きなスイングアークを作ることです。バックスイングでは、手でひょいとクラブを上げるのではなく、おへそを中心に上半身全体を深く回し、左肩がアゴの下に入るくらいまでしっかりと捻転します。腕は体に巻きつけるのではなく、できるだけ体から遠い位置を通るように意識することで、スイングの円弧が大きくなり、それだけでヘッドスピードは自然と上がっていきます。
グリッププレッシャーとフィニッシュ
大きなアークで振るためには、グリップを強く握りすぎないことも非常に重要です。グリップをギュッと握りしめてしまうと、手首や腕が固まってしまい、クラブヘッドがスムーズに動かなくなります(ヘッドが走らない、という状態です)。よく言われることですが、「小鳥を手のひらで包むように」あるいは「濡れたタオルを絞らない程度の強さ」で、優しく握ってあげましょう。そうすることで、ダウンスイングからフォローにかけて、クラブヘッドがビュンと加速し、しなりを最大限に活かしたショットが打てるようになります。
シニアは右足ベタ足でミート率UP
年齢を重ね、全盛期に比べて飛距離が落ちてきたと感じるシニアゴルファーにとって、フェアウェイウッドは失った飛距離を補い、スコアメイクを支えてくれる非常に心強い相棒となります。シニア世代が目指すべきゴルフは、若い頃のようなパワーゴルフではなく、経験と技術、そして賢いギア選びでスコアを組み立てる、クレバーなゴルフです。その中心となるのが、「飛距離の最大化」よりも「ミート率の安定化」を最優先する考え方です。
軸がブレない「ベタ足スイング」のすすめ
年齢と共に体の柔軟性や筋力が低下してくると、大きな体重移動を伴うスイングは、逆に体の軸をブレやすくさせ、打点を不安定にする原因となります。そこでおすすめしたいのが、多くのシニアプロも実践している、インパクトの瞬間まで右足のかかとを地面につけておく「ベタ足」スイングです。
右足かかとを浮かさないことで、下半身が安定し、体の左右へのスウェーが劇的に抑制されます。これにより、スイングの再現性が格段に高まり、常にボールをクラブの芯で捉える確率が上がるのです。体重移動が少なくなる分、飛距離が落ちるのではないかと心配されるかもしれませんが、芯を食ったショットはエネルギー伝達効率が非常に高いため、多少ヘッドスピードが落ちても、結果的に平均飛距離は伸びるというケースがほとんどです。上半身の捻転はしっかりと行いつつ、下半身はどっしりと安定させる。この「静かな下半身とダイナミックな上半身」の組み合わせが、シニアゴルファーの理想的なスイングと言えるかもしれません。
ミート率が上がるおすすめ練習ドリル
さて、フェアウェイウッド上達のための理論は色々とご紹介してきましたが、最終的にそれを自分のものにするには、やはり反復練習が不可欠です。しかし、ただ漠然とボールを打ち続けるだけでは、なかなか上達には繋がりません。ここでは、私が実際に効果を実感した、フェアウェイウッドのミート率を劇的に向上させるための、目的が明確な練習ドリルを3つ、さらに詳しくご紹介します。
ドリル1:連続マット擦りドリル(軸の安定化と最下点管理)
これは、スイング中の体のブレを強制的に無くし、スイングの最下点を一点に安定させるための究極のドリルです。
- やり方:まず、両足をピッタリと閉じて立ちます。その状態で、フェアウェイウッドを使い、腰から腰くらいの振り幅(ハーフスイング)で、連続して素振りを行います。
- 目的と意識:両足を閉じているため、少しでも体が左右に揺れる(スウェーする)と、すぐにバランスを崩してしまいます。倒れないようにするためには、体の中心軸を一切動かさず、その場でクルッと回転するしかありません。この時、毎回「シュッ」とマットの同じ場所を、同じ深さでソールが擦れるように意識してください。
- 目標:まずは5回連続で、同じ場所を同じ音で擦れることを目指しましょう。これができれば、あなたのスイングの再現性はかなり高いレベルにあると言えます。
ドリル2:テープドリル(入射角の適正化)
ダフリやトップの主な原因である、クラブの入射角が鋭角すぎたり、すくい打ちになったりするのを視覚的に修正するドリルです。
- やり方:ボールを置く位置から、10cm〜15cmほど手前(右足寄り)のマット上に、ガムテープやビニールテープを1本貼ります。そして、そのテープにクラブヘッドが触れないように、ボールだけをクリーンに打つ練習をします。
- 目的と意識:もしテープを叩いてしまったり、剥がしてしまったりする場合は、クラブが手前から下りてきている(ダフリ、すくい打ち)証拠です。テープを避け、ボールだけを打つためには、クラブヘッドを地面と平行に、低く長く動かす「レベルブロー」の軌道が必要になります。
- 応用:慣れてきたら、ボールの先(ターゲット側)にもテープを貼り、「手前のテープに触れず、ボールを打ち、先のテープを擦る」ようにすると、緩やかなダウンブローの練習にもなります。
ドリル3:スプリットグリップ・ドリル(体幹主導スイングの習得)
多くのミスを引き起こす「手打ち」を矯正し、お腹や背中といった大きな筋肉(体幹)を使ってクラブを振る感覚を強制的に身につけるためのドリルです。
- やり方:通常通りにグリップしたら、そこから右手を5cm〜10cmほど下にずらして握ります。つまり、左右の手の間隔を空けて握るわけです。このスプリットグリップの状態で、ゆっくりとした素振りや、実際にボールを打ちます。
- 目的と意識:この握り方をすると、手首の自由がほとんど効かなくなります。そのため、腕や手先の力だけでクラブを操作しようとすると、全く上手く振ることができません。クラブをスムーズに振るためには、腹筋や背筋を使い、体全体を回してスイングするしかなくなります。「手でクラブを振る」のではなく、「体の回転にクラブがついてくる」という、正しい体幹主導スイングの感覚を掴むのに最適です。
理想のフェアウエイウッド打ち方習得へ
ここまで、フェアウェイウッドの打ち方について、アドレスという全ての土台から、スイングの核心である「払い打ち」の感覚、そして具体的なミスの原因と対策、さらにはスコアメイクに直結する考え方や練習法まで、多角的に掘り下げてきました。
フェアウェイウッドは、その長さとロフトの少なさから、確かにアマチュアゴルファーにとっては難しいクラブの一つかもしれません。しかし、その構造や性能といった「クラブの特性」を正しく理解し、一つ一つの技術的な課題を焦らずにクリアしていけば、これほど頼りになり、ゴルフをダイナミックにしてくれる武器はないと私は確信しています。最も重要なマインドセットは、力任せにボールを叩きにいくのではなく、クラブが持っている性能を100%信じて、その機能を最大限に引き出してあげることです。
まずは、全てのショットの質を決定づける正しいアドレスとボール位置を体に染み込ませる。次に、ボールを無理に上げようとせず、幅の広いソールを信じて地面を滑らせるように「払い打つ」意識を徹底する。そして、もしダフリやトップといったミスが出たとしても、決して感情的にならず、その物理的な原因(体重移動のミスや前傾角度の崩れなど)に冷静に立ち返り、修正していく。この地道なプロセスの繰り返しこそが、揺るぎない自信と技術を築き上げる、唯一の方法なのだと思います。
今回ご紹介した様々な情報やドリルが、あなたの「フェアウエイウッド打ち方」に関する長年の悩みを解決し、ゴルフという素晴らしいスポーツをもっと深く楽しむための一助となれば、私としてもうれしい限りです。コースでフェアウェイウッドを握った時、不安ではなく「チャンスが来た!」とワクワクできる。そんな未来を目指して、ぜひご自身のペースで、楽しみながら練習に取り組んでみてくださいね。


