こんにちは!19番ホール研究所のthe19thです。
ゴルフクラブのシャフト選びって、本当に奥が深くて、そして悩ましいですよね。「Sフレックス」という魔法の言葉を信じて買ったのに、以前使っていた「R」よりも頼りなく感じたり、逆にハードヒッター向けの「X」に挑戦してみたら、硬すぎてボールが全く上がらなかったり…。メーカーによって硬さの基準が全く異なるため、スペックシートの文字だけを頼りにすると、しばしば「こんなはずじゃなかった」という結果に終わります。
実は、その長年の悩みを一気に解決してくれるかもしれないカギが、「振動数(cpm)」という客観的な数値に隠されています。これは、フレックス表記のようなメーカーごとの曖昧なものではなく、物理的な硬さを誰が見ても同じ基準で判断できる唯一の指標なんです。この記事では、「ゴルフ シャフト 振動数とは?」というあなたの根本的な疑問に、どこよりも詳しくお答えしていきます。振動数の正しい測定方法から、ご自身のヘッドスピードに合ったドライバーやアイアンの適正な振動数の目安、さらにはクラブセッティング全体の調和を図る「振動数フロー」というプロの領域まで、一歩踏み込んで分かりやすく解説します。シャフト選びで重要なもう一つの要素、トルクとの関係性まで理解すれば、もうメーカーのブランドイメージやフレックス表記に惑わされることはなくなるかもしれません。
この知識は、単なるうんちくではありません。あなたの大切なクラブ選びという「投資」を成功に導き、本当に自分に合った最高のパートナーを見つけ出すための強力な「武器」となります。次のクラブ選びが、きっと今まで以上に楽しく、そして的確になるはずですよ。
- メーカーのラベルに惑わされない「本当の硬さ」の比較方法
- ご自身のヘッドスピードに最適な振動数の具体的な目安
- セット全体の振り心地を揃える「振動数フロー」というプロの調整術
- リシャフトで絶対に失敗しないための具体的なチェックポイント
ゴルフ シャフトの振動数とは?硬さの新基準を解説
それでは、本題に入っていきましょう。「振動数」と聞くと、なんだか物理の実験みたいで難しく感じるかもしれませんが、安心してください。要は、これまでゴルファーの感覚や経験に頼っていたシャフトの「硬さ」というものを、誰でも同じ基準で語れるようにした「ものさし」だと思ってもらえれば大丈夫です。このものさしを手に入れることで、これまで多くのゴルファーを悩ませてきた「S」や「R」といったフレックス表記の曖昧さから解放される、その第一歩が始まります。
フレックス表記との決定的な違い
私たちがゴルフクラブを選ぶとき、まず間違いなく目にするシャフトの硬さ表記、それが「R(レギュラー)」「S(スティッフ)」「X(エキストラスティッフ)」といったアルファベットです。しかし、これがシャフト選びを複雑にしている最大の原因だと言っても過言ではありません。なぜなら、このフレックス表記はメーカーが自社の製品ラインナップの中で相対的に決めた、あくまで社内基準でしかないからです。
これは本当に重要なポイントなので、もう少し詳しく説明しますね。例えば、シニアやアベレージゴルファーを主なターゲットにしているA社の「Sフレックス」と、プロやトップアマといったアスリートゴルファーをターゲットにしているB社の「Sフレックス」では、その「硬さ」の定義が全く異なります。多くの場合、A社の「S」はB社の「R」よりも柔らかい、なんていう逆転現象が平気で起こります。さらに言えば、同じメーカー内ですら、ブランドが違えば「S」の硬さが違うことも珍しくありません。
この背景には、マーケティング的な側面が大きく影響しています。例えば、パワーに自信がないゴルファーでも「Sフレックスを使っている」という満足感を得られるように、実際にはR相当の硬さのシャフトに「S」と表記して販売する、いわゆる「見栄えフレックス」というものが存在します。これはユーザーの心理を巧みに利用した戦略ですが、純粋に自分に合う硬さを探しているゴルファーにとっては、混乱の元凶でしかありません。
一方で、振動数(cpm)は、そうした商業的なラベルを一切排除した、純粋な物理データです。その定義は「1分間にシャフトが何回振動するか(Cycles Per Minute)」を計測した数値。物理学的に言えば、これは「片持ち梁の固有振動数」であり、「シャフト自体の剛性」「ヘッド重量」「クラブの長さ」という3つの要素によって決まる、ごまかしの効かない客観的な値なのです。数値が高いほどシャフトの復元が速く「硬い」と評価され、数値が低いほど復元が遅く「柔らかい」と評価されます。このcpmという世界共通の言語があるからこそ、私たちは初めてメーカーの垣根を越えて、シャフトの性能を公平に比較検討することができるわけですね。
正しい振動数の測定方法と注意点
「振動数が客観的な指標なのは分かったけど、どうやって測るの?」という疑問が湧いてきますよね。振動数は専用の測定器を使って計測しますが、実はこの測定、いくつかの厳格なルールを守らないと、簡単に数値がズレてしまうほどデリケートな作業なんです。信頼できるデータを得るためには、測定の裏側にある変数を理解しておくことがとても重要になります。
測定の基本原理は、クラブのグリップ側を万力のようなもので固定(クランプ)し、ヘッド側を指で軽く弾いて振動させ、その揺れをセンサーでカウントするというシンプルなものです。しかし、この一連の作業の中に、測定値を左右するいくつもの落とし穴が潜んでいます。
1. クランプ長(固定する長さ)の影響
最も数値に影響を与えるのが、グリップエンドから何インチの部分を固定するかという「クランプ長」です。現在、多くの工房やメーカーで採用されているのは「5インチクランプ」という基準ですが、一部では「7インチクランプ」という基準も使われています。振動するのは固定されていない「自由な部分」なので、固定部分が長くなればなるほど(7インチ)、振動部分は短くなります。短い棒が速く振動するように、7インチクランプで測ると、5インチクランプで測るよりも振動数は高く(硬く)計測されます。その差はシャフトにもよりますが、5〜10cpmほど変わることもあります。ですから、異なるソースからのデータを比較する際は、この測定基準が統一されているかを確認するのが大前提となります。
2. クランプ圧力(締め付けの強さ)
次に重要なのが、シャフトを固定する際の締め付け圧力です。もし圧力が不足していると、シャフトがクランプ内で微細に動いてしまい、振動のエネルギーがロスしてしまいます。結果として、実際よりも振動数は低く表示され、測定ごとのバラつきも大きくなります。一方で、特に軽量カーボンシャフトの場合、圧力をかけすぎると繊維構造を破壊してしまうリスクも。熟練のクラフトマンは、手動式の測定器でも毎回ほぼ同じトルクで締め付けますが、より高い再現性を求めるなら、空気圧で常に一定の力で固定する「エアチャック式」の測定器が理想的です。
3. グリップの有無という変数
意外と見落とされがちですが、グリップが装着されているか否かでも測定値は変わります。ゴムやエラストマーといった弾性体であるグリップは、クランプの圧力を吸収・分散させるクッションの役割を果たします。そのため、グリップを装着した状態で測定すると、シャフト単体を金属のクランプで直接挟む場合に比べて、振動の支点が少し曖昧になり、数値は若干低く出る傾向があります。精密なデータ管理を行うフィッターの中には、シャフト本来の性能を見るためにグリップ装着前の「生データ」を重視する人もいれば、プレーヤーが実際に使う状態に近い「グリップ装着後」のデータを重視する人もいます。どちらが正しいというわけではありませんが、比較の際には条件を揃えることが鉄則です。
ドライバーの適正振動数とヘッドスピード
さて、振動数がシャフトの物理的な硬さを示すことはご理解いただけたかと思います。ここからが本番。その知識をどうやって自分に最適な一本を見つけるために活かすか、です。ここで最も重要な相関関係にあるのが、ゴルファー自身の「ヘッドスピード(HS)」です。
なぜヘッドスピードが速いパワフルなゴルファーほど、振動数が高い(硬い)シャフトが必要なのでしょうか?その理由は、スイング中にシャフトへかかる「負荷(Load)」の大きさにあります。トップからの切り返しからダウンスイングにかけて、シャフトは遠心力と慣性力によって大きくしなります。この時、HSが速ければ速いほど、シャフトにかかる力は増大し、しなる量も大きくなります。
もし、この強大な負荷に対してシャフトが柔らかすぎる(振動数が低い)と、いくつかの問題が発生します。
- 振り遅れ: シャフトが過度にしなりすぎて、インパクトの瞬間にヘッドが元の位置まで戻りきらない現象です。これによりフェースが開き、ボールは右へ大きくスライスしてしまいます。
- シャフトの暴れ: しなり戻る動きが不安定になり、ヘッドの挙動が安定しません。結果として打点がバラつき、飛距離も方向性も大きく損なわれます。
- 吹け上がり: インパクトでヘッドが必要以上に上を向く「ロフトが増える」動きが起こりやすくなります。これによりスピン量が増えすぎて、ボールが前に進まず吹け上がってしまいます。
逆に、ヘッドスピードが比較的ゆっくりなゴルファーが、プロが使うような硬いシャフト(高振動数)を使うとどうなるでしょうか。今度は、自分のパワーではシャフトを十分にをしならせることができません。ゴルフの飛距離は、この「シャフトのしなり戻り」のエネルギーを利用することで最大化されますから、その恩恵を受けられないことになります。結果として、ボールに十分な高さとキャリーが出せず、飛距離を大きくロスしてしまうのです。
つまり、自分のスイングスピードとテンポに対して、最も効率よくエネルギーを伝え、かつ最適なタイミングでヘッドがスクエアに戻ってきてくれる硬さ(振動数)のシャフトを選ぶことこそが、飛距離と方向性を両立させるための絶対条件と言えるのです。クラブが仕事をしてくれるのではなく、自分がクラブに合わせて無理をするスイングになっていないか、一度見直してみる価値はありますね。
アイアンで重要な振動数フローとは
ドライバーのシャフト選びがうまくいっても、それで終わりではありません。ゴルフクラブは最大14本の道具を使ってスコアを競うスポーツ。特に、スコアメイクの要となるアイアンセットにおいて、各番手の繋がり、すなわち「振動数フロー」が整っているかどうかは、ショットの安定性に死活問題レベルで影響します。
「振動数フロー」とは、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言えばクラブセッティング全体の振動数を番手順に並べてグラフにした時の線のことを指します。理想的なセッティングでは、クラブが短くなるにつれて(例: 5番アイアン → 6番アイアン → 7番アイアン…)、振動数は一定の割合でリニアに(直線的に)高くなっていきます。
具体的に、多くのクラブフィッターが理想とするのは、番手が1つ下がる(クラブの長さが0.5インチ短くなる)ごとに、振動数が約4cpmから5cpmずつ上昇していく状態です。これをグラフにプロットすると、ドライバーを始点として、ウェッジに向かってキレイな右肩上がりの直線を描きます。この状態を「フローが合っている」と言います。
なぜ、このフローを整えることがそれほど重要なのでしょうか。その最大の理由は、セット内の全てのクラブを、ほぼ同じスイングテンポ、同じ振り心地でスイングできるようにするためです。人間の感覚は非常に繊細で、もしセットの中に一本だけ極端に硬い、あるいは柔らかいクラブが混ざっていると、無意識のうちにそのクラブだけスイングを調整しようとしてしまいます。これが、スイングの一貫性を損なう大きな原因となるのです。
例えば、「なぜか7番アイアンだけが苦手で、トップやダフリが多い…」という悩みを抱えているゴルファーがいたとします。その原因は、スイングが悪いのではなく、単にその7番アイアンの振動数がフローから大きく外れていて、6番や8番と振り心地が全く違うせいかもしれません。このように、特定のクラブだけが上手く打てないという悩みの多くは、この振動数フローの破綻に起因しているケースが非常に多いのです。
知っておきたいトルクとの関係性
シャフト選びの世界をさらに深く探求する上で、振動数と並んで絶対に無視できないスペックが「トルク」です。この二つの要素の関係性を理解することで、シャフトのキャラクターをより立体的に捉えることができるようになります。
まず、おさらいですが、振動数がシャフトの「前後左右の曲げ方向の硬さ(曲げ剛性)」を表す指標であるのに対し、トルクは「シャフトの軸周りのねじれに対する硬さ(ねじれ剛性)」を表す指標です。単位は「度(deg)」で、数値が小さいほどねじれにくく(低トルク)、大きいほどねじれやすい(高トルク)ということになります。
この「振動数」と「トルク」は、しばしば「硬いシャフトは低トルク」「柔らかいシャフトは高トルク」と一括りにされがちですが、それは大きな間違いです。現代のカーボンシャフト製造技術は非常に進化しており、この二つの要素をある程度独立して設計することが可能です。この組み合わせによって、シャフトの性格は大きく変わってきます。
このように、振動数という「縦のしなり」の指標だけでシャフトを選ぶと、「硬いから叩けるはずなのに、なぜか球が散らかる…」といったミスマッチが起こり得ます。それはもしかしたら、トルクという「ねじれの動き」があなたのスイングと合っていないからかもしれません。振動数を基本の軸としつつ、トルクの数値も併せてチェックすることで、シャフト選びの精度は格段に向上するでしょう。
ゴルフ シャフトの振動数とは?スコアを変える活用術
振動数の基本的な理論を理解したところで、ここからはより実践的な活用術について解説していきます。せっかく得た知識も、実際のクラブ選びやスコアメイクに活かせなければ意味がありませんよね。このセクションでは、具体的な数値の目安や、クラブセッティングを最適化するための具体的なステップをご紹介します。ご自身のクラブを片手に、ぜひ読み進めてみてください。きっと新たな発見があるはずです。
ヘッドスピード別の振動数目安一覧
「理論は分かったから、結局自分にはどれくらいの振動数が合うの?」という声が聞こえてきそうですね。もちろん、スイングのテンポ(ゆったり振るスインガーか、鋭く振るヒッターか)や、持ち球によって最適な数値は一人ひとり異なりますが、ここでは一般的なドライバーにおけるヘッドスピードと振動数の関係を、より詳細な一覧表にまとめてみました。まずは、ご自身の現在のクラブが、この目安に対してどの位置にあるのかを確認する「健康診断」から始めてみましょう。
表の数値をどう解釈し、活用するか
この表を見て、ご自身のクラブのスペックが目安から大きく外れていたとしても、すぐに買い替える必要はありません。大切なのは、この数値を基に「なぜ自分の球筋はこうなるのか?」を論理的に考察することです。例えば、HS40m/sの人が260cpmのハードなクラブを使っていたら、「球が上がらず、右に滑るような弱い球が多い」という悩みの原因は、オーバースペックにある可能性が高いと推測できます。逆に、HS47m/sの人が240cpmのクラブを使っているなら、「叩きにいくとチーピンが出る、吹け上がって飛距離をロスしている」といった問題は、アンダースペックが原因かもしれません。このように、振動数の目安は、あなたのゴルフの課題を解決するための、非常に強力な診断ツールとなってくれるのです。
理想の振動数フローを作るコツ
セット全体の振り心地を統一し、ショットの再現性を高める「振動数フロー」。これを理想的な状態に近づけるためには、闇雲にクラブを買い替えるのではなく、計画的かつ戦略的なアプローチが必要です。ここでは、その具体的なステップと、見落としがちなポイントについて詳しく解説します。
まず最初に行うべきは、現状の正確な把握です。そのためには、信頼できるゴルフ工房にクラブを持ち込み、ドライバーからサンドウェッジまで、お手持ちの全てのクラブの振動数を測定してもらうことから始めましょう。この作業を面倒に感じるかもしれませんが、これがなければ全ての議論は始まりません。人間ドックで全身の数値を把握するのと同じで、まずは客観的なデータで自分のセッティングの「健康状態」を知ることが何よりも重要です。その際、可能であれば、長さや総重量、バランスといった他のスペックも同時に計測してもらうと、より深い分析が可能になります。
フロー調整の具体的な4ステップ
- Step1: 基準となる「アンカークラブ」を決める
セットの中で、最も信頼でき、気持ちよく振れるクラブを1本選びます。多くのゴルファーにとっては、7番アイアンやピッチングウェッジ、あるいはエースドライバーがこれにあたるでしょう。このクラブの振動数と振り心地が、あなたのセッティング全体の「基準点(アンカー)」となります。 - Step2: データをグラフ化して問題を「可視化」する
計測した全番手の振動数データを、横軸に番手(またはクラブ長)、縦軸に振動数をとってグラフにプロットします。手書きでも、Excelのような表計算ソフトを使っても構いません。こうしてデータを可視化することで、「7番だけがガクンと落ち込んでいる」「ユーティリティが異常に突出している」といった問題点が、誰の目にも明らかになります。 - Step3: フローから外れた「外れ値」の原因を探る
問題のある番手が特定できたら、なぜそうなっているのか原因を探ります。後から単品で買い足したクラブではありませんか?そのクラブだけリシャフトした経験はありませんか?あるいは、純正シャフトのままでも、モデルによっては特定の番手だけ特性が違うということもあり得ます。原因を特定することで、適切な対策が見えてきます。 - Step4: 調整方法を検討し、実行する
原因がわかれば、あとは対策です。最も確実なのは、フローから外れた番手をリシャフトし、理想のフローラインに乗るように調整することです。その他にも、ヘッドに鉛を貼って重量を少し増やす(振動数が下がる)、あるいはシャフトを少し短く持つ(体感硬度が上がる)といった微調整で対応できる場合もあります。
リシャフト時の振動数チェックポイント
「自分に合うシャフトに交換したい!」と考え、リシャフトに挑戦するゴルファーは年々増えています。これは、自分のスイングを最大限に活かすための非常に有効な手段ですが、一方で、振動数という客観的な指標を持たずに臨むと、「高価な買い物だったのに、前より悪くなった…」という悲劇に繋がりかねません。そうならないために、リシャフトを成功に導くための3つの重要なチェックポイントを押さえておきましょう。
1. 現状分析(ベースラインの徹底的な確認)
リシャフトの第一歩は、新しいシャフトを探すことではありません。まずは、今使っているクラブの「何が良くて、何が不満なのか」を徹底的に言語化することです。そして、そのクラブの振動数、総重量、バランスといったスペックを正確に計測します。これが、あなたのリシャフトの旅における「現在地」であり「羅針盤」となります。「なんとなく振りづらい」といった曖昧な感覚ではなく、「今の240cpmでは、少し叩きにいった時に左へ引っ掛けるミスが出る。もう少しシャフトがしっかり戻ってきてほしい」というように、具体的な現象と感覚を結びつけて分析することが成功のカギです。
2. 目標値の具体的設定
現状分析ができたら、次はその不満を解消するための具体的な目標スペックを設定します。「左へのミスを減らしたい」のであれば、「今の240cpmから、次は245~250cpmの範囲を狙おう」といった具体的な目標振動数を設定します。この時、先ほどのヘッドスピード別の目安一覧も参考にし、自分の体力に見合わないオーバースペックな目標になっていないかを確認することも重要です。この目標設定が曖昧なままショップに行くと、店員さんのおすすめや、その場の雰囲気で決めてしまい、失敗する可能性が高まります。
3. 試打と計測の徹底
目標値が決まったら、いよいよショップでの試打です。ここで最も重要なのは、フィーリング(感覚)だけでなく、必ず試打クラブの振動数を計測してもらうことです。多くのゴルフショップや工房には振動数計が設置されています。「このSフレックス、良い感じだな」で終わらせず、「この良い感じのSは、振動数が248cpmなのか。まさに目標通りだ」というように、自分の感覚と数値を結びつける作業が不可欠です。もし計測器がない場合でも、同じモデルのRやXも打たせてもらい、その中での相対的な硬さの違いを体感することで、判断の精度を高めることができます。
チップカットによる硬さの微調整法
ここからは、少しだけクラブフィッティングのディープな世界へご案内します。それは、「チップカット」という、シャフトの硬さを自在に調整するプロのテクニックです。この知識があれば、既製品のスペックに自分を合わせるのではなく、自分に合わせてスペックを作り出す、という新しい扉が開けるかもしれません。
「チップカット」とは、その名の通り、シャフトの先端(Tip)、つまりヘッドが装着される側を、数ミリから数センチ単位でカットしてからヘッドを装着するチューニング手法です。ゴルフクラブのシャフトは、一般的に手元側(バット)が最も硬く、先端にいくにしたがって徐々に柔らかくなるように設計されています。そのため、最も柔らかい部分である先端をカットすることで、シャフト全体の剛性が上がり、結果として振動数は上昇(硬化)します。
では、具体的にどれくらいカットすると、どれくらい硬くなるのでしょうか。これはシャフトの設計によって大きく異なりますが、一般的な目安として、0.5インチ(約1.27cm)のチップカットで、振動数は約3〜5cpm上昇すると言われています。この特性を利用すれば、非常に繊細な硬さの調整が可能になるのです。
例えば、あるシャフトのラインナップに「Sフレックス(250cpm)」と「Xフレックス(260cpm)」しかなく、あなたの理想が「255cpm」だったとします。こんな時、クラフトマンはSフレックスのシャフトを選び、先端を0.5インチ〜1.0インチほどチップカットすることで、目標の255cpmに限りなく近い硬さを創り出すことができます。これは、既製品をただ組み立てるだけでは決して実現できない、まさにオーダーメイドのフィット感を生み出すための究極の技法と言えるでしょう。
チップカットは、クラブとシャフトの特性を深く理解した、信頼できるクラフトマンにのみ許された領域です。自分で安易に試すのは絶対に避けるべきですが、「もう少しだけ、このシャフトがしっかりしてくれたら…」と感じた時には、工房で「チップカットでの調整は可能ですか?」と相談してみる価値は十分にありますよ。
振動数が合わない時のよくある質問
ここまで読み進めていただいた方なら、振動数に関する知識はかなり深まったかと思います。最後に、このテーマに関してゴルファーからよく寄せられる、実践的な質問とその回答をQ&A形式でまとめてみました。あなたの疑問も、この中にあるかもしれません。
- QSフレックスを買ったのに、以前のRより柔らかく感じるのはなぜですか?
- A
これは最も多い質問の一つですが、答えは本記事で繰り返し解説してきた通り、「フレックス表記はメーカーの独自基準だから」です。特に、幅広い層のゴルファーをターゲットにしたモデルの「S」は、多くの人が扱いやすいように、意図的に柔らかめ(振動数が低め)に設計されていることがよくあります。また、シャフトの設計思想として、手元側を重く硬くし、ヘッドの重さを感じにくくする「カウンターバランス設計」のシャフトも、スペック上の硬さよりも体感的に柔らかく感じやすい傾向があります。購入前にブランドイメージや表記だけで判断せず、可能であれば振動数を確認することが、このようなミスマッチを防ぐ最も確実な方法です。
- Qドライバーは絶好調なのに、なぜかアイアンが全く打てません…
- A
この悩みの原因は、ドライバーとアイアンの「振動数フローの断絶」にある可能性が非常に高いです。例えば、ドライバーは50g台の軽量カーボンシャフト(例: 240cpm)、アイアンは110g台の重量スチールシャフト(例: 5番で310cpm)といった組み合わせの場合、両者の間には振動数と重量に大きな「崖」が存在します。体は無意識のうちに、軽いクラブと重いクラブで振り方を変えようとするため、スイングの一貫性が失われてしまうのです。理想的には、ドライバーからアイアンまで、振動数と重量がなだらかな階段状に繋がっていることが望ましいです。一度、セット全体のスペックを計測し、フローに大きな断絶がないかを確認してみることを強くお勧めします。
- Q飛距離を伸ばしたくてクラブを1インチ長くしたら、逆に飛ばなくなりました。なぜ?
- A
クラブを長く(長尺化)すると、理論上はヘッドスピードが上がり飛距離が伸びる可能性がありますが、同時にいくつかの物理的な変化が起こります。まず、同じシャフト、同じヘッドで長く組むと、シャフトのしなる部分が長くなるため、物理的な振動数は下がります(柔らかくなります)。しかし、ゴルファーが感じる「振り心地」は、むしろ硬く感じることがあります。これは、クラブが長くなることでスイングウェイト(バランス)が重くなり、クラブ全体の慣性モーメントが増大するため、「振りにくい」「操作しづらい」と感じるからです。結果として、ミート率が著しく低下し、芯を外したショットが増えることで、かえって飛距離をロスしてしまうのです。安易な長尺化は、メリットよりもデメリットが上回るケースが多いことを覚えておきましょう。
総まとめ!ゴルフシャフト振動数とは?
さて、非常に長い道のりでしたが、「ゴルフ シャフト 振動数とは?」という大きなテーマについて、その本質から実践的な活用法まで、深く掘り下げてきました。最後に、この記事を通じてあなたに最もお伝えしたかった核心的なポイントを、改めて3つに絞ってまとめたいと思います。
振動数は、クラブ選びにおける非常に強力で、信頼に足るツールです。しかし、同時に覚えておいてほしいのは、振動数が全てを決める魔法の杖ではない、ということです。シャフトには、本記事でも触れたトルクや重量、しなりの特性を示すキックポイントといった、多くの重要な要素が複雑に絡み合っています。また、最新のシャフトテクノロジーは日進月歩で、高弾性のカーボン素材などを使うことで「振動数は低いのに、復元スピードが速く弾きが良い」といった、従来の常識では測れない性能を持つ製品も登場しています。
最終的に理想の一本に出会うためには、振動数という客観的なデータを「基本の物差し」として持ちつつも、弾道測定器が示すリアルなデータ(ボール初速、スピン量、打ち出し角)、そして何よりもあなた自身が感じる「振り心地」というフィーリングを融合させることが不可欠です。
この記事が、あなたのシャフト選びの旅における、確かで信頼できるガイドとなれたなら、これ以上の喜びはありません。次にゴルフショップや工房に足を運んだ際には、ぜひ勇気を出して「このクラブの振動数はいくつですか?」と尋ねてみてください。その一言が、あなたのゴルフを新たなステージへと導く、大きな一歩になるかもしれませんよ。



