長年愛用してきたパターのグリップ、そろそろ表面がツルツルしてきたり、硬化が気になったりしていませんか。特にスコッティキャメロンのような高価で精密なパターを使っていると、グリップ交換ひとつとっても「バランスが崩れたらどうしよう」「純正品はどこで買えるのか」といった不安が尽きないものです。
実は、たった数グラムの重量差がタッチを大きく変えてしまうこともあれば、市場には驚くほど精巧な偽物が出回っているという現実もあります。この記事では、失敗しないための適切なモデル選びから、ショップでの工賃相場、そして絶対に騙されないための真贋判定まで、私の経験を交えて詳しくお話しします。
- 純正グリップの種類ごとの特性と自分のスタイルに合った選び方がわかる
- グリップの重量変化がパターの操作性に与える影響と調整方法を学べる
- 市場に出回る偽物グリップの特徴と本物を見分ける具体的な技術を知れる
- ショップへ依頼する場合の工賃相場や自分で交換する際の手順を把握できる
スコッティキャメロンのグリップ交換と種類の選び方

パターの性能を最大限に引き出すためには、ヘッドのデザインだけでなく、唯一の接点であるグリップの選定が極めて重要です。ここでは、代表的なモデルの特徴から、重量管理によるバランス調整、さらには市場にはびこる偽物の見抜き方まで、専門的な視点で解説していきます。
純正グリップの種類とおすすめ
スコッティキャメロンのパターグリップは、単なる持ち手ではなく、それぞれのヘッド形状やストロークタイプに合わせて緻密に計算された「機能部品」です。現在市場で主に入手可能な純正グリップは、大きく分けて「ピストリニ」「ピストレロ」「パドル」「マタドール」の4種類に分類されます。これらはそれぞれ異なる形状と特性を持っており、どれを選ぶかによってパッティングのフィーリングは劇的に変化します。
まず、最も伝統的で標準的なモデルが「ピストリニ(Pistolini)」です。名前の由来は「小さなピストル」から来ており、グリップエンドに向かって緩やかに太くなるクラシックな形状が特徴です。特にニューポートやニューポート2といったブレードタイプのパターと相性が良く、手首の動きを過度に制限しないため、フェースの開閉を使ってボールを操りたいプレーヤーにおすすめです。タイガー・ウッズ選手が長年愛用している形状としても知られていますね。
次に紹介するのが「ピストレロ(Pistolero)」です。ピストリニに比べてグリップエンドの広がり(フレア)が大きく、全体的に少しボリュームがあります。この形状は左手の掌底(ヒールパッド)をしっかりとグリップエンドに当てることができるため、左手首の角度をキープしやすく、ストロークを安定させたい方に適しています。最近の「スペシャルセレクト」シリーズなどで標準採用されている「ピストレロ・プラス」は、さらに下巻き部分(右手部分)が太くなっており、現代的な手首を使わないストロークに対応しています。
そして、クラシックな雰囲気を好む方に根強い人気があるのが「パドル(Paddle)」グリップです。前面がフラット(平ら)になっているのが最大の特徴で、親指を乗せたときにフェース面の向きを感じ取りやすい設計になっています。これはスクエアに構え、スクエアにインパクトしたいという意識が強いプレーヤーにとって強力な武器になります。
市場には様々なサードパーティ製グリップがありますが、やはりスコッティキャメロンのヘッドには純正グリップが視覚的にも機能的にもベストマッチします。ただし、後述するように重量管理が非常にシビアなので、単にデザインだけで選ぶと痛い目を見ることになります。自分のプレースタイルとパターヘッドの特性を理解した上で、最適な一本を見つけ出してください。
ピストレロやマタドールの特徴
ここでは、近年のスコッティキャメロン製品で特に採用率の高い「ピストレロ」と「マタドール」について、さらに深掘りして解説します。この2つは性格が全く異なるため、違いを明確に理解しておく必要があります。
ピストレロ(Pistolero)の深化
先ほど触れたように、ピストレロはグリップエンドのフレアが特徴ですが、実は「色」によって重量が大きく異なるという落とし穴があります。私のリサーチやフォーラムでの情報によると、黒色のピストレロは約80g前後であるのに対し、赤色は約84g、白色は約86g、紫色は約87gと、顔料の違いだけで最大8g近い差が出ることが確認されています。ゴムに練り込む顔料の比重が影響しているのですが、これを知らずに「気分転換に黒から白へ変えよう」とすると、パターのバランスが大きく変わってしまいます。
また、最新の「ピストレロ・プラス」は、従来のピストレロよりも右手部分の肉厚が増しており、テーパー(細くなる度合い)が少なくなっています。これは近年のPGAツアーでのトレンドである「手首の動きを抑えたストローク」をサポートするための進化です。重量も84g〜86g程度とやや重めに設定されており、大型化したヘッドとのバランスを取っています。
マタドール(Matador)の革新
一方、マタドールグリップは、近年の「太グリップブーム」に対応するために開発されたハイテクグリップです。従来のラバー素材とは異なり、複合素材や表面の複雑なテクスチャ(凹凸パターン)を採用することで、吸い付くようなグリップ力と高い振動吸収性を実現しています。「ファントムX」シリーズのような大型マレットパターには、このマタドールが標準装着されることが多いですね。
マタドールには「スモール」「ミディアム」「ラージ(XL)」といったサイズ展開がありますが、注意すべきはその重量です。ラージサイズになると重量が100gを超えることもあり、一般的なピストリニ(約75g)から交換すると、手元が25g以上も重くなります。こうなると、ヘッドの重みを全く感じられなくなる「カウンターバランス状態」に陥る可能性があります。
| モデル | 推定重量 | 特徴 | おすすめユーザー |
|---|---|---|---|
| ピストレロ | 80g – 87g | エンドの広がり大、色で重量差あり | 手首を固定したい人、標準的なヘッド |
| ピストレロ・プラス | 84g – 86g | 右手部分が太い、現代的設計 | 最新モデルを使用する人、安定重視 |
| マタドール | 85g – 110g+ | 太め、高いグリップ力、振動吸収 | 大型マレット使用、太グリップ好き |
特に「サイケデリック・マタドール」のような限定デザインは、グリップ単体で5万円以上で取引されることもあり、もはやコレクターズアイテムの域に達しています。しかし、人気がある分だけ偽物も多いので注意が必要です。
パターグリップの重さとバランス
グリップ交換において最も専門的かつ重要な知識が「スイングウェイト(バランス)」の管理です。多くのゴルファーが見落としがちですが、パターの振り心地は「総重量」と「重量配分」で決まります。
ここには「5グラムの法則」と呼ばれる黄金律が存在します。
それは、「グリップ重量が5g変化すると、スイングウェイトは約1ポイント変化する」というものです。しかも、この関係は逆相関になります。
- グリップを重くする(例:80g → 90g) ⇒ ヘッドが軽く感じる(バランスが下がる)
- グリップを軽くする(例:80g → 70g) ⇒ ヘッドが重く感じる(バランスが上がる)
例えば、あなたが今まで85gのピストレロを使っていて、もっと繊細なタッチを出したいからといって75gのピストリニに交換したとします。すると、手元が10g軽くなるため、スイングウェイトは約2ポイント上昇します(例:D4 → D6)。結果として、ヘッドがズシリと重く感じられ、距離感が合わなくなったり、テークバックが揺れやすくなったりする可能性があります。
スコッティキャメロンのパター、特に「スタジオセレクト」以降のモデルでは、ソールに交換可能なウェイトスクリューが搭載されています。メーカーはパターの長さとグリップ重量に合わせて、このソールウェイトを厳密に調整して出荷しています。例えば、34インチのパターには少し重めのウェイトを、35インチには標準ウェイトを、といった具合です。
私が以前、マタドールのラージサイズ(約110g)をニューポート2(ブレード型)に装着した際、あまりに手元が重くなりすぎてヘッドの存在感が消え、全く距離感が合わなくなった経験があります。その時はソールウェイトを大幅に重いもの(20g×2個など)に交換し、さらに鉛を貼ってようやく使えるバランスになりました。グリップ交換は単なるパーツ交換ではなく、パター全体のチューニングであることを忘れないでください。
偽物とサークルTの見分け方
スコッティキャメロンの世界には、残念ながら精巧な模倣品(フェイク)が蔓延しています。特に「サークルT(Circle T)」と呼ばれるツアー支給品モデルや、人気のマタドールグリップは、偽造業者の格好の標的となっています。ここでは、私たちが偽物を掴まされないための「鑑識眼」を養いましょう。
まず、最も分かりやすい判断基準は「臭い」です。
人間の嗅覚は優秀なセンサーです。真正品のグリップは、高品質なラバーやエラストマーを使用しているため、香りは控えめか、あるいは特有の甘い香り(バニラ香料など)がします。対して偽物は、開封した瞬間に「石油系の溶剤」「自転車のタイヤチューブ」「安価な工業用ゴム」のような、鼻を突く強烈な刺激臭がします。この臭いがしたら、その時点で99%偽物と疑って間違いありません。
次に「フォント(文字)と成形精度」です。
真正品のロゴ(Scotty CameronやTitleist)は、エッジが鋭く(Crisp)、非常に鮮明です。偽物は金型の精度が低いため、文字の線が不自然に細かったり、逆に潰れて太くなっていたりします。特に筆記体の「Scotty」のカーブ部分がガタついていたり、「Titleist」の文字間隔が不均一だったりすることが多いです。また、グリップエンドのキャップが斜めに歪んで接着されているのも偽物の典型的な特徴です。
そして、決定的なのが「市場価格の異常な乖離」です。
「サークルT」のグリップは、本来ツアープロのみに供給されるもので、市場価値は数万円から、高いものでは10万円を超えます。オークションサイトなどで「新品未使用 サークルT グリップ 1,980円」などとして販売されているものは、経済合理性から考えて100%偽物です。7万円の価値があるものを2千円で売る人は、この世に存在しません。
偽物のグリップは、単に見た目が悪いだけでなく、素材が劣悪なためすぐにベタついたりボロボロになったりします。また、有害な可塑剤が使われている可能性も否定できません。愛器の価値を下げないためにも、真正品を選ぶことは必須条件です。
太さによる操作性の違い
グリップの太さは、パターの操作性を決定づける重要なファクターです。「太いほうが安定する」とよく言われますが、メリットとデメリットを正しく理解して選ぶ必要があります。
細いグリップ(ピストリニ等)のメリット
細いグリップの最大の特徴は、指先の感覚がヘッドに伝わりやすいことです。ヘッドの重み、フェースの向き、インパクトの衝撃をダイレクトに感じ取ることができます。これにより、微妙なタッチの調整や、意図的にフェースを開閉してラインに乗せるといった高度な操作が可能になります。手首を柔らかく使い、感性を重視するタイプのゴルファーには細いグリップが適しています。
太いグリップ(マタドール、スーパーストローク等)のメリット
太いグリップは、手首の余計な動き(パンチが入る、こねる等)を物理的に抑制する効果があります。手のひら全体で握る感覚になるため、ストローク中のフェース面が安定しやすく、ショルダーストローク(肩でのストローク)がしやすくなります。特にショートパットで引っかけのミスが多い人や、パンチが入って距離感が合わない人には、太めのグリップが特効薬になることがあります。
注意点としての「慣れ」
ただし、急激に太さを変えると、これまで培ってきた距離感がリセットされてしまうリスクがあります。太いグリップは手首が使いにくくなる分、ロングパットでの距離感が鈍くなる傾向があります。また、先述したように太いグリップは重量も重くなりがちなので、バランスの変化も同時に考慮しなければなりません。
私の推奨としては、まずは現在使用しているグリップと同じ太さ・形状からスタートし、明確な悩み(例:手首が折れる癖を直したい)がある場合にのみ、太めのモデル(ピストレロ・プラスやマタドール・ミディアムなど)へ段階的に移行することをおすすめします。一気に変えるのではなく、自分のストロークの変化を観察しながら調整していくのが、遠回りのようで一番の近道です。
スコッティキャメロンのグリップ交換手順と費用

納得のいくグリップを手に入れたら、次は交換作業です。ここでも「プロに任せる」か「自分でやる」かの選択が迫られます。それぞれのコスト感とリスク、そして具体的な手順について、現場の実情を交えて解説します。
ゴルフ5など店舗への持ち込み工賃
最も確実で推奨される方法は、ゴルフ専門店への依頼です。ゴルフ5やヒマラヤゴルフ、ゴルフパートナーといった量販店、あるいは地元のゴルフ工房などが対応してくれます。
一般的な工賃の構造は以下のようになっています。
- その店でグリップを購入した場合: 無料 〜 300円程度/本
- グリップを持ち込み(他店購入)の場合: 500円 〜 1,100円程度/本
スコッティキャメロンの純正グリップは、量販店の店頭には常に在庫があるわけではなく、ネット通販などで入手して持ち込むケースが多いと思います。その場合、持ち込み工賃が適用されるのが一般的です。一見すると高く感じるかもしれませんが、数百円から千円程度でプロの技術を買えると思えば安いものです。
プロに依頼する最大のメリットは、「正確なアライメント(向き)調整」です。パターグリップは、フェース面に対してスクエア(直角)に挿すことが命です。これが数ミリでもズレていると、構えた時に違和感が生じ、パッティング全体が狂ってしまいます。プロは専用の治具やレーザー、そして長年の経験を使って完璧に装着してくれます。
参考までに、大手ショップの工賃事情については、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
ゴルフパートナーのグリップ交換工賃は?料金と安く済ませる裏技 | 19番ホール研究所
ただし、持ち込みの場合の注意点があります。それは「偽物のリスク」です。もし持ち込んだグリップが偽物であると店舗側が判断した場合、作業を断られる可能性があります。また、万が一作業中にグリップが破損した場合の補償も、持ち込み品に対しては対象外となるケースがほとんどです。この点からも、グリップの購入元選びは慎重に行う必要があります。
自分で交換する方法と道具
工賃を節約したい、あるいは自分の納得いくまで微調整したいという方は、DIYでの交換に挑戦するのも一つの手です。ただし、必要な道具を揃える初期投資が必要です。
必要な道具一覧
| アイテム | 用途 | 備考 |
|---|---|---|
| グリップカッター | 古いグリップを切断する | フック刃のカッターが安全 |
| 両面テープ | グリップを固定する | バッファロー社等のゴルフ専用品推奨 |
| 交換溶液 | テープの粘着力を一時的に消す | 専用スプレー、またはホワイトガソリン |
| スターター | グリップの入り口を広げる | あるとスムーズに挿入可能 |
| ウエス・キッチンペーパー | 溶液の拭き取り | 大量に使います |
基本的な手順は、アイアンやドライバーのグリップ交換と同じです。
1. 古いグリップをカッターで切り裂いて剥がす。
2. シャフトに残った古いテープを綺麗に剥がす(ここが一番大変です)。
3. 新しい両面テープをシャフトに巻く(螺旋巻きか縦巻きかはお好みで)。
4. グリップ内部とテープに溶液をたっぷりと吹きかける。
5. 一気に押し込み、向きを微調整して乾燥させる。
DIYのメリットは、下巻きテープの回数を変えて太さを微調整したり、自分が納得するまで向きを調整できる点です。しかし、溶液が乾くまでの短い時間(数分)勝負になるため、手際の良さが求められます。特にパターは向きのズレが致命傷になるため、マスキングテープなどで事前にセンター位置をマーキングしておくなどの工夫が必要です。
溶剤を使ったグリップの抜き方
「今ついているグリップはレアものだから、切って捨てるのはもったいない」「別のパターに移植したい」という場合に用いられるのが、グリップの「抜き取り(Pulling)」という技術です。これは高度なDIYスキルであり、リスクも伴います。
使用する道具とメカニズム
通常の交換道具に加え、「注射器(シリンジ)」と長めの針を使用します。グリップのゴム部分に針を刺し、内部の両面テープに向けて溶剤(ホワイトガソリンやナフサ)を直接注入します。溶剤によって接着剤を溶解させ、グリップをシャフトから引き抜くという仕組みです。
手順の概要
1. 注射器に溶剤を吸い上げる。
2. グリップの先端、中間、エンド側の数箇所に針を斜めに刺し、溶剤を注入する。
3. グリップ全体を揉みほぐし、溶剤を内部に行き渡らせる。
4. 接着がバリバリと剥がれる音がしたら、ゆっくりとねじりながら引き抜く。
私自身も何度か試みましたが、成功率は五分五分といったところです。サークルTのような数十万円するグリップでない限り、手間とリスクを考えると新品を買った方が合理的だというのが正直な感想です。
グリップを再利用する際の注意点

運良くグリップを綺麗に抜くことができたとしても、再利用にはいくつかのハードルがあります。
まず、「内径の拡張」です。
引き抜く際に強い力で引っ張られたゴムは、元のサイズには完全に戻りません。再装着しようとすると、シャフトに対して緩く、接着しても動いてしまうことがあります。この場合、下巻きテープを2重、3重にして太さを調整するなどの工夫が必要になります。
次に、「内部の清掃」です。
抜いたグリップの内側には、古い両面テープのカスがこびりついています。これを綺麗に取り除かないと、新しいテープが密着せず、装着後に凸凹ができたり、グリップが捻じれたりする原因になります。専用のブラシや工具を使って掃除するのですが、これが非常に手間のかかる作業です。
結論として、グリップの再利用は「コレクションとして保管する」場合や、「どうしても廃盤になったモデルを使いたい」という特殊な事情がある場合に限定すべきです。機能性を最優先するなら、やはり新品への交換がベストチョイスです。
スコッティキャメロンのグリップ交換総括
ここまで、スコッティキャメロンのグリップ交換について、選び方から偽物対策、交換手順まで詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
グリップ交換は、単なる消耗品の交換作業ではありません。
それは、パターという精密機器の「性能維持(メンテナンス)」であり、自分仕様に合わせる「機能最適化(チューニング)」であり、そして愛器の価値を守る「資産価値保全(アセットマネジメント)」でもあります。
市場には安価な偽物が溢れていますが、それらに手を出してしまうことは、パターの性能を損なうだけでなく、あなたのゴルファーとしてのプライドをも傷つける行為です。多少高くても、信頼できるルートで真正品(Authentic)を入手し、プロの手で確実に装着してもらうこと。それが、グリーンの上で最高の結果を出すための、遠回りのようで一番確実な投資なのです。
この記事が、あなたのパターライフをより充実させる一助となれば幸いです。最適なグリップという「接点」を手に入れて、自信を持って次のパットに臨んでください。
(出典:スコッティキャメロン公式サイト scottycameron.com)




