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シード権のない状態とは?ゴルフ・駅伝の過酷な現実と復活の道

シード権のない状態とは?ゴルフ・駅伝の過酷な現実と復活の道 プロゴルファー

こんにちは!「19番ホール研究所」運営者のthe19thです。

スポーツ観戦をしていると、時々耳にする「シード権のない状態」という言葉。特に応援している選手やチームがその状況に陥ると、来シーズンはどうなるんだろう?と、いてもたってもいられなくなりますよね。女子ゴルフのメルセデスランキング50位という厳しいボーダーラインや、シード落ちするとどうなるのか、その具体的なペナルティについて気になっている方も多いのではないでしょうか。

また、男子ゴルフのQTランキングや、箱根駅伝の予選会がどれほど過酷なのか、シード落ちの理由を探している方もいるかもしれません。さらに、リランキングやステップアップツアー、ABEMAツアーといった復活への道筋、生涯獲得賞金による特例、そしてよく誤解されがちな関東学生連合の扱いまで、知りたいことはたくさんあると思います。

この記事では、そんな「シード権のない状態」というキーワードに隠された、各競技のリアルな構造と、そこから這い上がるためのドラマを、女子ゴルフ、男子ゴルフ、箱根駅伝の3つの舞台に絞って、できるだけ分かりやすく解説していきます。この記事を読み終える頃には、シード権を巡る戦いが、もっと深く、面白く感じられるはずです。

  • 女子ゴルフのシード権争いの仕組み
  • 男子ゴルフ特有のセーフティネット
  • 箱根駅伝におけるシード落ちの重大さ
  • シード権のない状態からの復活ルート
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シード権のない状態とは?各競技の厳しい現実

まず、女子ゴルフ、男子ゴルフ、箱根駅伝、それぞれの世界で「シード権のない状態」が具体的に何を意味するのか、その厳しい現実から見ていきましょう。同じ「シード落ち」でも、競技によってその重みや構造が全く違うのが面白いところであり、また残酷なところでもありますね。このセクションでは、各競技における「権利喪失」がもたらす直接的な影響を深掘りしていきます。

メルセデスランキング50位がボーダーライン

近年の女子プロゴルフ(JLPGA)界で、選手の運命を最も大きく左右するのがメルセデス・ランキングです。かつては年間の獲得賞金額でシード権が決まっていましたが、よりシーズンを通じた安定性と実力を評価するため、各大会の順位に応じて付与されるポイント制へと完全に移行しました。これにより、「高額賞金大会で一発当ててシード獲得」というケースがほぼなくなり、毎週の試合でコンスタントに結果を出すことが求められる、よりシビアな環境になったと言えますね。

そして、その天国と地獄を分かつ絶対的な境界線が、年間ランキング「50位」です。このラインをシーズン終了時点で超えているかどうかが、翌年のプロゴルファーとしての生活を180度変えてしまいます。

シード選手(50位以内)が得る「安定」

50位以内に入った選手は、翌年のJLPGAツアーほぼ全試合への出場権が保証されます。これは単に試合に出られるというだけでなく、計り知れないメリットをもたらします。

  • 計画的なスケジュール管理:1年間の出場試合が確定しているため、移動や宿泊、トレーニング、休養の計画を戦略的に組むことができます。心身ともにベストな状態で試合に臨める環境が整うわけです。
  • 経済的な安定とスポンサー契約:安定したテレビ露出が見込めるため、スポンサー契約を獲得しやすくなり、経済的な基盤が固まります。ゴルフは経費のかかるスポーツですから、これは非常に大きなアドバンテージです。
  • 精神的な余裕:「来週の職場がある」という安心感は、プレーにも良い影響を与えます。目の前の1打に集中でき、アグレッシブなゴルフを展開しやすくなります。

シード権のない選手(51位以下)が直面する「不安」

一方で、51位以下に終わった選手は、原則として翌年のレギュラーツアーへの自力出場ができません。常に「次の試合に出られるか分からない」という不安と戦い続けることになります。ポイント制は予選通過(最低でもポイントがもらえる)を積み重ねることが重要になるため、怪我を押してでも出場し続けなければならないという「休めない恐怖」も生み出しています。この差は、あまりにも大きいと言わざるを得ません。

ランキングのリアルタイム性
メルセデス・ランキングは試合ごとに更新されるため、シーズン中は常に変動します。特に終盤戦は、1打の差で数ランクが入れ替わることも珍しくありません。ファンとしてはハラハラしますが、選手たちのプレッシャーは想像を絶するものがあるでしょう。(出典:日本女子プロゴルフ協会『メルセデス・ランキング』

過酷な女子ゴルフのQTランキングという関門

メルセデス・ランキングで51位以下となり、シード権を喪失した選手たちが次に向かうのが「QT(クォリファイングトーナメント)」です。これは翌シーズンの限られた出場権を懸けて、数百人の選手がしのぎを削る、文字通りのサバイバルレース。多くの選手にとって、キャリアを繋ぐための生命線となります。

QTは通常、ファーストステージとファイナルステージに分かれており、厳しい戦いを勝ち抜いた選手だけがファイナルQTに進むことができます。そして、このファイナルQTの最終順位こそが「QTランキング」となり、翌シーズンの出場優先順位を決定づけるのです。

QTランキングがもたらす残酷な格差

QTを突破したからといって、決して安泰ではありません。その順位によって、翌年の運命は大きく変わります。

  • QTランキング上位(例:1位〜20位):翌年前半戦のほとんどの試合に出場できる可能性が高まります。ここで結果を残し、後述する「リランキング」で上位に入ることができれば、後半戦の出場、そしてシード復帰への道が大きく開けます。
  • QTランキング中位(例:21位〜40位):出場できる試合数が限られてきます。数少ないチャンスで確実にポイントを稼がなければならないという、極度のプレッシャーに晒されます。
  • QTランキング下位(例:41位以下):レギュラーツアーへの出場は、欠場者が出た場合の「繰り下がり」を待つしかなく、非常に厳しい状況です。主戦場は下部ツアーであるステップ・アップ・ツアーとなります。

QTはまさに一発勝負の世界。4日間のプレーの出来不出来が、向こう1年間の活動を左右してしまうのです。さらに、前年のシード選手もQTに参戦してくるため、そのレベルは非常に高く、突破は年々困難になっています。エントリーフィーや遠征費、滞在費といった経済的な負担も大きく、選手たちは様々なものを背負ってこの戦いに挑んでいるのが現実です。応援している選手がQTに回ると聞くと、ファンとしても胃が痛くなるような気持ちになりますね。

QTランキングの重要性については、出場資格を詳しく解説したJLPGAツアーの出場資格と優先順位の仕組みの記事でも深掘りしていますので、合わせてご覧いただくと、より理解が深まるかなと思います。

男子ゴルフでシード落ちすると復帰は険しい

男子プロゴルフ(JGTO)の世界でも、賞金ランキング上位者(例年65位前後)がシード権を獲得するという基本構造はありますが、シード落ちした際の状況は女子ツアーとは少し様相が異なります。端的に言うと、一度シード権のない状態に陥ると、這い上がるための道のりがより長く、険しいという特徴があります。

その最大の理由は、女子ツアーの「リランキング」のような、シーズン途中で出場優先順位が劇的に変動する制度が男子ツアーでは限定的だからです。つまり、一度失った地位をシーズン中に取り返すのが非常に難しい構造になっています。

最低1年を要する「時間的コスト」

シード権を失った男子プロがレギュラーツアーに本格復帰するためには、原則として下部ツアーである「ABEMAツアー」で年間を通して戦い、賞金王になるか、もしくは賞金ランキング上位に入って翌年のQTファイナルからの出場権を得て、そこで上位に入る、というルートを辿る必要があります。いずれにせよ、最低でも1年間はトップカテゴリーから離れることを覚悟しなければなりません。

この「1年」という時間は、アスリートにとって非常に重いものです。

  • 試合勘の維持:レギュラーツアーの速いグリーンや深いラフといった厳しいセッティングから離れることで、トップレベルの試合勘が鈍るリスクがあります。
  • 経済的・精神的負担:下部ツアーの賞金額はレギュラーツアーに比べて格段に低く、遠征費などを考えると活動を続けるだけでも大変です。スポンサーが離れてしまうケースも少なくありません。
  • 新陳代謝の壁:男子ツアーは、後述する生涯獲得賞金シードなどベテランへの配慮が手厚い分、若手が割って入る枠が限られている側面もあります。休んでいる間に、次々と勢いのある若手が登場し、復帰のハードルはさらに上がっていきます。

こうした背景から、男子プロゴルフの世界では「シード権を維持し続けること」の重要性がより一層高いと言えるかもしれません。一度落ちてしまうと、再びあの華やかな舞台に戻るためには、相当な覚悟と努力が求められるのです。

箱根駅伝の予選会がもたらす年間計画の歪み

これまで見てきた個人競技のゴルフとは異なり、大学というチーム、組織全体で戦う箱根駅伝における「シード権のない状態」は、個人のキャリア以上に、チームの未来を左右する重大な問題です。

ご存知の通り、箱根駅伝では本戦で総合10位以内に入った大学に、翌年の本戦出場権、すなわちシード権が与えられます。一方で、11位以下に終わった大学は、その年の10月に開催される過酷な「予選会」に回らなければなりません。この予選会への出場義務こそが、チームの年間計画に深刻な「歪み」をもたらす元凶なのです。

「二重のピーキング」という生理学的な壁

長距離ランナーが最高のパフォーマンスを発揮するためには、年間のトレーニング計画を立て、最も重要なレースにコンディションの頂点(ピーク)を合わせる「ピーキング」が不可欠です。

  • シード校の場合:目標は1月2日・3日の本戦のみ。夏合宿で走り込み、秋以降にレースで実践を積みながら、1月に向けて徐々に調子を上げていくという、理想的な年間計画を立てることができます。
  • シード権のない校の場合:まず、10月の予選会(ハーフマラソン)でチーム全員がベストパフォーマンスを発揮し、出場権を勝ち取らなければなりません。ここで一度目のピークを作る必要があります。そして、予選会を突破した喜びも束の間、わずか2ヶ月半という短期間で、疲労を抜きつつ、今度は箱根駅伝本戦(より長く、起伏の激しいコース)に向けて再びピークを作り直すという、非常に困難な調整を強いられます。

生理学的に見ても、トップアスリートが短期間に2度の完璧なピークを作ることは極めて難しいとされています。多くの場合、予選会で力を使い果たしてしまい、本戦では本来の力を発揮できない、あるいは調整の過程で故障者が続出するといった事態に陥りやすくなります。これが、予選会校が本戦でシタートで出遅れたり、苦戦したりする大きな要因の一つなんですね。

大学ブランドを揺るがすシード落ちの理由とは

箱根駅伝におけるシード落ちは、単に翌年の予選会が大変になる、という戦術的な問題だけでは済みません。大学の広報、スカウト、資金調達といった経営戦略の根幹を揺るがす「ブランドの危機」に直結します。その背景にあるのが、一度落ちると抜け出しにくい「負のスパイラル」です。

シード落ちが招く深刻な悪循環

なぜシード落ちがこれほどまでに恐れられるのか。その理由は、複合的な要因が絡み合ってチーム力を継続的に低下させてしまうからです。

  1. メディア露出の激減と広報効果の喪失:

    箱根駅伝は、お正月の国民的行事であり、その視聴率は絶大です。シード校として本戦に出場すれば、2日間にわたって大学名が全国に連呼され、その広告効果は数十億円とも言われます。これが予選会に回ると、メディアでの扱いは一気に小さくなり、大学の知名度向上やイメージアップの機会を失います。これは、受験生集めにも少なからず影響を与えると言われています。

  2. 優秀な高校生ランナーのスカウト難:

    全国のトップクラスの高校生ランナーは、やはり「箱根駅伝で活躍したい」「強いチームで走りたい」と願うものです。シード権を失い、本戦出場が確約されていない大学は、どうしてもスカウト活動において不利になります。結果として有力選手がシード常連校に集中し、大学間の戦力格差はますます広がっていきます。これが、近年「シード校が固定化されつつある」と言われる大きな理由です。

  3. 資金・サポート体制の弱体化:

    大学の陸上競技部、特に駅伝チームの活動は、大学からの強化費だけでなく、OB・OG会からの寄付金や、活躍に期待する企業スポンサーからの支援によっても支えられています。本戦での活躍は、こうした支援を集める上での大きなアピール材料になりますが、シード落ちが続くとOB会の熱も冷め、寄付金が集まりにくくなる傾向があります。これにより、最新のトレーニング機器の導入や、充実した合宿の実施が困難になり、強化が思うように進まない…という悪循環に陥ってしまうのです。

このように、箱根駅伝のシード権は、単なる出場権ではなく、チームの未来を左右する生命線と言っても過言ではないのです。

関東学生連合はシード権に無関係なチーム

箱根駅伝の話題の中で、しばしば誤解を生むのが「関東学生連合」チームの存在です。このチームについて正しく理解しておくことも、「シード権のない状態」を語る上で重要なポイントになります。

関東学生連合は、箱根駅伝予選会で敗退してしまった大学の中から、個人成績が優秀だった選手を選抜して編成される、いわばドリームチームです。予選会で力走したにもかかわらず、チームとして本戦出場を逃した選手たちに、箱根路を走る機会を与えるという趣旨で組織されています。

あくまで「オープン参加」という特別な扱い

ここで絶対に押さえておかなければならないルールが、関東学生連合は「オープン参加」であるということです。これは、正式な出場チームとは見なされない、ということを意味します。

  • 順位がつかない:チームとしてどれだけ速いタイムで走っても、公式な順位は与えられません。常に「記録は参考」という扱いです。
  • 区間記録も参考扱い:チームだけでなく、選手個人の記録も公式なものとはなりません。たとえ区間1位のタイムで走ったとしても、「区間賞」ではなく「区間最高相当」といった表現になります。(ただし、近年ルールが一部変更され、個人記録が公認されるケースも出てきました)
  • シード権には全く影響しない:最も重要な点ですが、関東学生連合チームが総合10位以内に相当するタイムでフィニッシュしたとしても、選手が所属する各大学のシード権獲得には一切、まったく関係がありません。

このチームで走ることは、選手個人にとっては自身の力を全国に示す絶好のアピールの場であり、非常に名誉なことです。しかし、箱根駅伝の根幹があくまで「大学対抗」の駅伝競走であるため、複数の大学から選手が集まる混成チームは、シード権争いの枠外に置かれている、と理解しておく必要があります。応援する側も、このルールを知っていると、より深くレースを楽しめるかなと思います。

シード権のない状態から復活への道筋とは

ここまで各競技の厳しい現実を見てきましたが、もちろんスポーツの世界は「終わり」だけではありません。「シード権のない状態」から再び光の当たる場所へと這い上がっていく復活のドラマこそ、私たちの心を最も揺さぶるのかもしれません。ここでは、選手やチームがどのようなルートを辿って復活を目指すのか、その具体的な道筋を詳しく見ていきましょう。

女子ゴルフのリランキングで後半戦出場を狙う

シード権を失った女子プロゴルファーにとって、1年間のキャリアを左右する最も重要な制度が「リランキング」です。これは、QTランキングの資格でシーズン前半戦に出場した選手たちの成績を途中で集計し、その結果に基づいて後半戦の出場優先順位を並べ替える(リランキングする)という、非常にダイナミックな仕組みです。

運命を分ける「第1回リランキング」

リランキングは年に数回実施されますが、中でも圧倒的に重要なのが、例年6月下旬〜7月上旬頃の特定試合(近年では「アース・モンダミンカップ」)終了後に行われる「第1回リランキング」です。

シーズン開幕からこの時点までのメルセデス・ランキングのポイント合計で新たな順位が決定され、この順位がシーズン後半戦の出場権に直結します。ここで一定の順位(年によって変動しますが、概ね35位~40位あたりが目安とされています)をクリアできなければ、シーズン後半戦のレギュラーツアー出場はほぼ絶望的となり、「職場を失う」状態へと追い込まれてしまいます。

そのため、シード権のない選手たちは、開幕戦からエンジン全開で戦わなければなりません。シード選手がメジャー大会に向けて調整できるのに対し、ノーシード選手は1試合も無駄にできないというプレッシャーの中で戦います。数少ないチャンスで結果を出すためには、予選通過を狙う「守りのゴルフ」ではなく、上位を狙う「攻めのゴルフ」が求められますが、それが裏目に出て予選落ちを喫してしまう…というジレンマに陥る選手も少なくありません。まさに、毎試合が崖っぷちのサバイバルと言えるでしょう。

第2回リランキングという最後のチャンス
第1回リランキングで下位に沈んでも、まだ僅かな望みは残されています。秋口に行われる「第2回リランキング」です。対象試合はさらに限られますが、ここで劇的な巻き返しを見せ、終盤戦の出場権を掴み取る選手も稀にいます。最後まで諦めない姿勢が、奇跡を生むことがあるんですね。

ステップアップツアー賞金女王からの昇格

リランキングというサバイバルに敗れ、レギュラーツアーへの道が閉ざされてしまった選手たちの多くが、次なる戦いの場として選ぶのが、JLPGAの下部ツアーである「ステップ・アップ・ツアー」です。ここでの戦いは、再びレギュラーツアーへ返り咲くための、長く険しい「裏街道」と言えるかもしれません。

ステップ・アップ・ツアーは、未来のスターを夢見る若手選手や、もう一度輝くことを誓う中堅・ベテラン選手がしのぎを削る、非常にレベルの高い舞台です。ここで年間を通して戦い抜き、素晴らしい成績を収めた選手には、再びトップカテゴリーへの扉が開かれます。

復活への2つの切符

ステップ・アップ・ツアーからレギュラーツアーへ直接昇格するには、主に2つのルートがあります。

  1. 賞金ランキング1位(賞金女王):年間賞金ランキングで見事1位に輝いた選手には、翌年のレギュラーツアー第1回リランキングまでの出場権が与えられます。ほぼ前半戦フル出場が約束される、最大の栄誉です。
  2. 賞金ランキング2位:ランキング2位の選手にも、同じく翌年のレギュラーツアー第1回リランキングまでの出場権が与えられます。

この2つの枠を勝ち取るために、選手たちは年間十数試合を必死に戦います。しかし、ここで得られるのはあくまで「前半戦のチャンス」です。レギュラーツアーに戻った後、再びリランキングの壁を乗り越えなければ、シード権獲得には至りません。

レギュラーツアーとステップ・アップ・ツアーの主な違い

項目 レギュラーツアー ステップ・アップ・ツアー
賞金総額(目安) 1億円〜3億円 2,000万円〜3,000万円
コースセッティング 非常に速いグリーン、深いラフ 比較的易しいセッティング
メディア注目度 テレビ中継あり、高い ネット配信中心、限定的

このように、環境面でも大きな違いがあり、ステップ・アップ・ツアーで「勝ち癖」をつけて自信を取り戻す選手もいれば、レギュラーツアーの厳しい環境に再適応できず苦しむ選手もいます。「生還率」は決して高くない、これが現実です。

男子プロの生涯獲得賞金という特別シード

男子プロゴルフ(JGTO)には、女子ツアーにはない、長年ツアーに貢献してきた功労者を称え、救済するためのユニークな制度が存在します。それが、通称「生涯獲得賞金シード」と呼ばれる特別保障制度です。

これは、JGTOが定める公式競技における生涯獲得賞金が、歴代ランキングで25位以内に入っている選手に対して与えられる特別な権利です。この資格を持つ選手は、たとえ前年の賞金ランキングでシード権を逃したとしても、キャリアの中で一度だけ、自分が希望するシーズンにシード選手としてツアーに復帰することができます。

まさに「伝家の宝刀」

この制度は、選手にとってまさに「伝家の宝刀」と言えるでしょう。ケガや一時的なスランプでシード落ちしてしまったスター選手が、この権利を行使して見事な復活劇を遂げる…というシーンは、ゴルフファンの記憶にも数多く刻まれています。

  • 行使のタイミングが重要:権利は一度しか使えないため、どのタイミングでこのカードを切るかは、選手にとって非常に大きな戦略的決断となります。「まだ自力で這い上がれる」と挑戦を続けるのか、あるいは「この1年が勝負」と決めて権利を行使するのか。その決断が、その後のキャリアを大きく左右します。
  • 制度の功罪:この制度は、往年の名選手のプレーを長く見られるというファンにとっての喜びがある一方で、ツアー全体の新陳代謝をやや遅らせ、若手選手の参入障壁になっているという側面も指摘されています。スター選手の保護と、世代交代の促進という、ツアーが抱えるジレンマが垣間見える制度とも言えるかもしれません。

いずれにせよ、特定の有名選手の名前とともに「シード権」が検索されるとき、その背景にはこの生涯獲得賞金シードの資格があるかどうか、というファンの関心が隠れていることが多いですね。自分が応援しているベテラン選手がこの資格を持っているか調べてみるのも、一つの楽しみ方かもしれません。

ABEMAツアー賞金王が掴む翌年の切符

生涯獲得賞金シードのような特別な権利を持たない大多数の男子プロにとって、「シード権のない状態」から抜け出すための最も正攻法かつ王道ルートとなるのが、下部ツアーである「ABEMAツアー(ABEMA TV TOUR)」での戦いです。

ABEMAツアーは、レギュラーツアー出場を目指す若手有望株、返り咲きを狙う中堅選手、そして経験豊富なベテランが入り乱れて戦う、非常に競争の激しいフィールドです。ここで年間を通して安定した成績を残し、トップに立つことは、レギュラーツアーで戦うための実力を備えていることの何よりの証明となります。

賞金王に与えられる最大の報酬

この厳しいツアーで、見事年間賞金ランキング1位(賞金王)に輝いた選手には、翌年のレギュラーツアー1年間の出場権、すなわちシード権が与えられます。これは、シード権のない状態の選手が目指すことのできる、最も価値ある切符と言えるでしょう。

しかし、その道は決して平坦ではありません。

  • 狭き門:シード権が与えられるのは、原則として賞金王ただ一人です。2位以下の選手は、レギュラーツアーのQT(予選会)ファイナルステージへの出場権など、段階的なアドバンテージは得られますが、直接的なシード権には届きません。
  • 実力が試される長丁場:年間十数試合を通して、常に上位争いを続けなければ賞金王にはなれません。一発のまぐれ当たりでは決して届かない、本物の地力が問われます。

過去には、このABEMAツアー賞金王をステップに、レギュラーツアーでもトップ選手へと駆け上がっていった選手が数多くいます。ファンとしては、未来のスター候補がここでどのような戦いを見せるのか、レギュラーツアーとはまた違った視点で注目してみると、男子ゴルフの面白さがさらに増すかもしれませんね。

過酷なシード権のない状態を乗り越えるために

ここまで、女子ゴルフ、男子ゴルフ、そして箱根駅伝という3つの舞台を例に、「シード権のない状態」が何を意味し、そこからいかにして復活を目指すのかを見てきました。競技や制度は違えど、そこには共通する厳しさと、だからこそ生まれるドラマがあることを感じていただけたのではないでしょうか。

最後に、この記事の要点を改めて整理し、私たちファンがどのように選手やチームと向き合っていけば良いのかを考えてみたいと思います。

【総まとめ】シード権のない状態からの復活ルート

  • 女子ゴルフ (JLPGA)

    メルセデス・ランキング50位の壁は絶対。シードを失うとQTへ。復活の鍵は、前半戦の成績で後半戦の運命が決まる「リランキング」と、下部ツアーである「ステップ・アップ・ツアー」での賞金ランク上位(1位・2位)入り。

  • 男子ゴルフ (JGTO)

    一度シードを失うと復帰に時間がかかる構造。下部ツアー「ABEMAツアー」で賞金王になるのが王道。また、功労者にはキャリアで一度だけ使える「生涯獲得賞金シード」という特別な権利も存在する。

  • 箱根駅伝

    総合10位以内が絶対条件。シード落ちすると、10月の「予選会」を勝ち抜かなければならない。これは単なる一試合ではなく、年間計画の破綻や大学ブランドの低下という「負のスパイラル」に繋がる、極めて重大なペナルティ。

結局のところ、「シード権のない状態」とは、単に試合に出られないという事実以上に、経済的、肉体的、そして何よりも精神的な「常時予選」というプレッシャーと戦い続ける状態なのだと思います。常に結果を求められ、一つのミスがキャリアを左右する。そんな極限状況で戦う選手たちの姿に、私たちは心を動かされるのかもしれません。

ファンとして、ただ華やかな優勝争いだけでなく、シード権を巡るボーダーライン上の攻防や、リランキングの順位、下部ツアーでの奮闘にも目を向けてみる。そうすることで、応援している選手やチームへの思いは、より一層深いものになるはずです。この記事が、あなたのスポーツ観戦の世界を少しでも広げるきっかけになれば、私にとってこれ以上の喜びはありません。

 

the19th

40代、ゴルフ歴20年の「ギアオタク」サラリーマンです。ベストスコアは73( HC10)。「シングル」の称号まであと一歩のところで、長年足踏みしています。
「その1打は、ギアで縮まる」を信念に、これまで試打してきたクラブは数知れず。給料のほとんどは最新ギアに消えていきます。
このブログは、20年間こだわり続けた「ギア選び」の記録です。

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