こんにちは!「19番ホール研究所」のthe19thです。
ショートゲームの要、ウェッジ。その中でもタイトリストのボーケイウェッジは、プロからアマチュアまで絶大な信頼を得ていますよね。ただ、いざ「自分もボーケイを…!」と思っても、SM8やSM9、最新のSM10といったモデルがずらりと並び、正直どれを選べばいいか迷いませんか?さらに中古市場に目を向ければ、SM6のような名器や、日本専用のフォージドモデルまであって、まさに沼状態です。
SM9とSM10の決定的な違いは何か、SM8とSM9ならどっちが自分に合うのか。そもそもフォージドの評価ってどうなの?アマチュアの味方と言われるDグラインドの特徴や、正しいグラインドの選び方も知りたい…。そんな具体的な悩みを抱えている方も多いんじゃないかなと思います。私も新しいウェッジを検討するときは、いつも同じことで頭を悩ませています。
この記事では、そんなボーケイウェッジに関するあらゆる疑問を解消するため、歴代モデルの評価を徹底的に掘り下げていきます。単なるスペック紹介ではなく、それぞれのモデルが持つ個性や、どんなゴルファーにおすすめなのかを分かりやすく解説しますので、きっとあなたのエースウェッジ選びの最高の羅針盤になるはずです。
- 歴代ボーケイウェッジの評価とテクノロジーの進化
- SMシリーズと日本専用フォージドモデルの決定的な違い
- スイングタイプに合わせた最適なグラインドの選び方
- 今が狙い目のおすすめ中古モデルと賢い選び方
ボーケイ ウェッジの歴代評価と名器たち
まずは、ボーケイウェッジがどのように進化してきたのか、その歴史を振り返ってみましょう。特に評価の高い「名器」と呼ばれるモデルや、市場を賑わせた新旧モデルの比較は、ウェッジ選びの重要なヒントになりますよ。ボーケイの歴史は、単なる形状の変化だけでなく、物理学とクラフトマンシップが融合した技術革新の歴史でもあるんです。
SM6は今でも名器として通用する?
結論から言うと、SM6は今でも十分に通用する、いや、むしろ積極的に選びたい「名器」だと私は考えています。
2016年に発売されたこのモデルがゴルフ界に与えた衝撃は、なんといっても「プログレッシブCGデザイン」を初めて採用したことに尽きます。それまでのウェッジは、どのロフトでも重心位置はほぼ同じ場所にありました。しかしSM6は、「ロフトが大きくなるほど、重心位置を高くする」という、まさにコペルニクス的転回を成し遂げたのです。
なぜ重心を高くすると良いのでしょうか?少しだけ物理の話になりますが、ロフトが大きいウェッジ(56°や58°)でボールを打つと、ボールはフェースの上を滑り上がるようにインパクトします。この時、重心が低いと、インパクトの力にヘッドが負けてしまい(ギア効果でフェースが上を向く)、ボールが必要以上に高く吹き上がってしまう「バルーニング」という現象が起きやすくなります。これでは距離感が安定しません。
SM6は、バックフェース上部に厚みを持たせて重心を高くすることで、インパクトの衝撃に当たり負けしないヘッドを実現しました。その結果、打ち出し角が安定し、スピンがしっかりかかった「前に飛ぶ」強い弾道が打てるようになったのです。この物理的な裏付けが、多くの上級者やプロから「距離感が劇的に安定した」と絶賛された理由なんですね。
さらに、溝のテクノロジーも進化しています。「TX4グルーブ」と呼ばれる新しい溝形状と、溝の間に細かい筋を入れる「パラレルミーリング」の組み合わせによって、特にラフからのショットや、フェースを少し開いて打つようなハーフショットでも、安定して高いスピン性能を発揮してくれます。
もちろん、最新モデルと比べれば進化している部分はありますが、ウェッジとしての基本性能、特に弾道の安定性という点においては、今でも一線級の実力を持っています。これからボーケイを試してみたい方、あるいは安価で高性能なセカンドウェッジを探している方にとって、SM6は最高の選択肢の一つと言って間違いないでしょう。
SM8とSM9はどっちを選ぶべきか
中古市場で最も在庫が豊富で、価格もこなれてきているのがSM8とSM9。この2モデルは非常によく似ていますが、実は目指した性能の方向性が少し異なります。どちらを選ぶべきか、それぞれの特徴を深く掘り下げてみましょう。
SM8(2020年)の特徴:前方重心が生む「絶対的な方向性」
SM8の最大のキーワードは「前方重心(フローティングCG)」です。これは、ネックを長くし、トウ側に高比重のタングステンを配置することで、重心をフェース面の前に「押し出す」という画期的な設計でした。
重心がヘッドの後方にあると、インパクトの瞬間にヘッドが開きやすく、ボールは右に飛び出す傾向があります。SM8は重心を打点に近づけることで、インパクト時にフェースが自然とスクエアに戻ろうとする力を強くしました。これにより、MOI(慣性モーメント)が向上し、芯を外した時のヘッドのブレが大幅に減少したのです。
実際に打ってみると、その効果は明らかです。とにかく曲がらない。左右のブレが本当に少ないんです。アプローチでグリーンを外す原因が、縦の距離感よりも左右の方向性にある、というゴルファーにとっては、まさに救世主のような存在と言えるでしょう。
SM9(2022年)の特徴:高重心化で手に入れる「プロの弾道」
一方のSM9は、SM8の優れた前方重心設計を継承しつつ、さらに垂直方向の重心位置を「さらに高く」することに注力しました。SM6から続く高重心化の思想を、さらに突き詰めたモデルですね。
このさらなる高重心化によって、打ち出し角はより低く抑えられ、スピン量はさらに増加しました。プロが打つような、低い弾道で飛び出し、グリーンに着弾してから2バウンド目で「キュキュッ!」と止まる「ワンホップ・ストップ」のボールが、アマチュアでも格段にイメージしやすくなりました。
また、SM9からは新たに「Tグラインド」がラインナップに追加されました。これは極端なローバウンスで、非常に高い操作性を誇る上級者向けのグラインド。より多彩なショットを求めるゴルファーのニーズにも応えています。
結論として、アプローチのミスをシンプルに減らし、安定性を求めるならSM8。よりプロのような弾道を追求し、スピンコントロールを楽しみたいならSM9、という選択になるかなと思います。ご自身のゴルフの課題と照らし合わせて、最適な一本を選んでみてください。
SM9とSM10の決定的な違いとは
2024年に待望のニューモデルとして登場したのがSM10です。「最新モデルが常に最良のモデル」という言葉は、特に進化の著しいゴルフクラブにおいては真実味を帯びています。では、大ヒットしたSM9から、SM10は一体どのような進化を遂げたのでしょうか。
メーカーの公式情報や国内外のレビューを総合すると、SM10の進化は「劇的な変化」というよりも、これまでのテクノロジーを丹念に磨き上げた「究極の正統進化」と表現するのが最も適切だと思います。
最大の改良点は、ロフトごとに最適化された重心位置を、さらにフェースセンターに近づけたことです。SM9でも非常に高いレベルにあった重心設計を、さらに精密にチューニングしてきた形ですね。重心が打点に近づけば近づくほど、インパクト時のエネルギーロスが減り、ゴルファーはよりスクエアなインパクトを感じやすくなります。これが「打感が良くなった」「フィーリングが向上した」という評価に繋がっています。
この進化がもたらす最大の恩恵は「正確性の向上」です。アメリカの権威あるゴルフメディア「MyGolfSpy」の2024年ウェッジテストにおいて、SM10は並み居る競合を抑えて「正確性」の項目で1位を獲得しています。これは、プレーヤーが意図した通りの距離と方向性を、極めて高い再現性で実現できるクラブであることの客観的な証明と言えるでしょう。
見た目にも細かな改良が加えられています。アドレス時に上から見ると、SM9に比べてわずかにコンパクトになり、リーディングエッジのラインもシャープになりました。これは、タイトリストの主力アイアンであるTシリーズ(T100やT150)からの見た目の連続性を意識したデザインで、アイアンセットからウェッジまで、スムーズな流れで構えたいゴルファーにとっては非常に嬉しい変更点です。
では、SM9ユーザーがすぐに買い替えるべきか?と問われると、判断が難しいところです。SM9が持つスピン性能や安定性も依然としてトップクラスです。しかし、0.1ヤードの距離感や、ほんのわずかな打感の違いにまでこだわる競技ゴルファーや上級者にとっては、SM10がもたらす「究極の正確性」は大きな武器になるはずです。まさに、「スコアを削り出すための、最後のワンピース」と言える存在かもしれません。(出典:タイトリスト公式サイト Vokey Design SM10 ウェッジ)
日本仕様ボーケイ フォージドの評価
グローバルモデルであるSMシリーズの影に隠れがちですが、日本市場には「軟鉄鍛造(Forged)」への根強い信仰があります。その熱い要望に応える形で開発されたのが、日本専用モデルの「ボーケイ・フォージド」シリーズです。これは単なる素材違いのモデルではなく、日本のゴルフ環境に徹底的に最適化された、もう一つのボーケイと言えます。
最大の違いは、やはりその製法と素材にあります。SMシリーズが精密鋳造(キャスト)で作られるのに対し、フォージドは「S20C」という非常に柔らかい軟鉄素材を鍛造製法で成形しています。金属の塊を叩き上げ、内部の結晶組織を密にすることで、ボールがフェースに長く食いつくような、独特の柔らかい打感が生まれます。この「球持ちの良さ」が、スピンコントロールを容易にし、多くの日本人ゴルファーを魅了してやみません。
なぜ日本専用モデルが必要なのか?
その答えは、主に「芝」の違いにあります。日本のゴルフ場で主流の高麗芝や野芝は、葉が硬くて太く、ボールが少し浮いた状態になりやすいという特徴があります。また、梅雨など雨が多い気候のため、地面が柔らかくなっているコンディションも多いですよね。
こうした環境では、SMシリーズのようなシャープなソール(特にローバウンスのグラインド)だと、リーディングエッジが地面に刺さってしまうミスが出やすくなります。そこで、ボーケイ・フォージドは、ソールに丸みを持たせ、日本の芝の上を「滑らせる」ように設計されています。この形状がダフリのミスを大幅に軽減し、アベレージゴルファーに大きな安心感を与えてくれるのです。
打感へのこだわりが強い方、払い打つようにアプローチをする方、そして何より日本のコースで最高のパフォーマンスを発揮したい方にとって、ボーケイ・フォージドはSMシリーズを凌ぐ最良のパートナーになる可能性を秘めています。
こちらの記事「ボーケイSM10評価と選び方!試打で判明したスピンの真実」も参考にしてみてください。
2015コールドフォージドは伝説の名器
数あるボーケイ・フォージドの歴代モデルの中でも、ひときわ異彩を放ち、「伝説の名器」として今なお多くのゴルファーから愛され続けているのが「2015年モデルのコールドフォージド」です。
このモデルがなぜこれほどまでに高く評価されているのか。その理由は、一言で言えば「究極の安心感」にあると私は思います。その安心感を生み出している要素は、主に二つです。
一つ目は、その独特の「形状(顔つき)」です。最近のウェッジがシャープで直線的な形状(いわゆる出っ歯)が主流なのに対し、2015年モデルはやや強めのグースネックと、丸みを帯びたリーディングエッジが特徴です。アドレスした際に、この形状がボールを優しく包み込んでくれるような視覚的効果を生み、「これならミスしなさそう」という絶大な安心感をプレーヤーに与えてくれます。特にアプローチに苦手意識を持つゴルファーにとって、このメンタル面でのサポートは計り知れません。
二つ目は、その形状がもたらす「機能的なやさしさ」です。丸みを帯びたリーディングエッジは、多少手前からヘッドが入ってしまっても地面に突き刺さることなく、ソールが滑ってボールを拾ってくれます。つまり、アマチュアに最も多い「ザックリ」のミスをクラブが助けてくれるのです。この寛容性の高さが、結果としてスコアメイクに直結するため、多くのアマチュアから「お守り」的な存在として絶大な信頼を得ました。
ボーケイ ウェッジの歴代評価から選ぶ最適解
さて、歴代モデルの個性や進化の歴史が見えてきたところで、ここからはより実践的な視点から、「あなたにとっての最適な一本」を見つけるための具体的な方法について掘り下げていきましょう。中古市場での賢い選び方から、ボーケイウェッジの心臓部ともいえる「グラインド」の科学まで、徹底的に解説します。
おすすめの中古モデルはどれ?
「結局、今買うならどのモデルが一番コストパフォーマンスが高いの?」という疑問は当然ですよね。ここでは、2024年現在の市場価格と性能のバランスを考慮した、私なりの「狙い目」中古モデルランキングをご紹介します。
第1位:ボーケイ SM9(特に58° Dグラインド)
最新のSM10と性能的にほとんど遜色がないにもかかわらず、中古価格は1万円台前半まで下がってきており、文句なしのコストパフォーマンス最強モデルです。SM8から進化した高重心設計によるスピン性能は、アマチュアでも十分に体感できるレベル。特に「Dグラインド」は、バウンス効果によるやさしさと、フェースを開いて使える操作性を両立しており、ほとんどのアマチュアゴルファーにとってベストな選択肢の一つになるはずです。
第2位:ボーケイ SM8(特に50°/52° Fグラインド)
1万円を切る価格帯も視野に入り、非常にお買い得感が増しているモデルです。SM8最大の武器である「前方重心」による方向安定性は、特にフルショットに近い距離を打つギャップウェッジ(AW)やアプローチウェッジ(PWとの間のクラブ)で絶大な効果を発揮します。アイアンの流れでシンプルに打ちたい番手には、オーソドックスなFグラインドとの組み合わせが最適でしょう。
第3位:ボーケイ SM6(56° Mグラインド)
5,000円前後から探せる、「名器」をとにかく安く体験したいならこのモデルしかありません。現代ボーケイの基礎を築いた「プログレッシB CG」の恩恵は、今打っても色褪せません。溝の状態が良い個体を見つけるのが少し難しくなってきましたが、もし見つかれば練習用としても最高のパートナーになります。多彩なショットを練習したいなら、操作性の高いMグラインドがおすすめです。
打感が違う?軟鉄と鋳造の違い
「軟鉄鍛造は打感が良い」とよく言われますが、そもそも「鋳造」と何が違うのか、なぜ打感に差が生まれるのか、意外と知らない方も多いかもしれません。この違いを理解すると、クラブ選びがもっと面白くなりますよ。
製法の違いを簡単に解説
- 鋳造(ちゅうぞう / Casting): SMシリーズに採用されている製法です。約1500℃に熱してドロドロに溶かした金属(8620カーボンスチールなど)を、ヘッドの形をした鋳型(いがた)に流し込み、冷やして固めます。たい焼きを作るイメージに近いですね。この製法のメリットは、複雑な形状でも精密に作れること。SMシリーズのような高度な重心設計(中空構造や複合素材)を実現できるのは、この製法のおかげです。
- 鍛造(たんぞう / Forging): フォージドシリーズに採用されている製法。熱した金属の塊(S20C軟鉄など)を、巨大なプレス機で何度も叩いて(鍛えて)ヘッドの形に成形していきます。日本刀を作るイメージですね。この製法のメリットは、金属内部の結晶の目が細かく整い、密度が高まること。これが、インパクト時の不要な振動を抑え、ボールがフェースに長く乗るような独特の柔らかい打感を生み出します。
打感と性能、どちらを優先?
打感の違いを言葉で表現するのは難しいですが、一般的に以下のように言われます。
| 鋳造(SMシリーズ) | 軟鉄鍛造(フォージド) | |
|---|---|---|
| 打感 | 「カチッ」「コツッ」としたソリッドな感触。弾き感が強く、ボール初速が出やすい。 | 「グシャッ」「モチッ」とした柔らかい感触。フェースにボールが食いつく感じ。 |
| フィードバック | 芯を食った時と外した時の差が明確に分かりやすい。 | 全体的にマイルドなため、ミスヒット時も衝撃が少ない。 |
| 性能的メリット | 設計自由度が高く、重心設計など最新テクノロジーを盛り込みやすい。 | フィーリングを重視したスピンコントロールがしやすい。 |
結局のところ、これは「どちらが優れているか」という話ではなく、完全にゴルファーの好みと価値観の問題です。ミスヒットがすぐに分かる明確なフィードバックと最先端の性能を求めるなら鋳造のSMシリーズ。何物にも代えがたい心地よい打感と、ボールを操る感覚を大事にしたいなら軟鉄鍛造のフォージドシリーズ。ぜひ一度、両方を打ち比べて、ご自身が「気持ちいい」と感じる方を選んでみてください。
グラインドの選び方、基本のキ
ボーケイウェッジを語る上で、絶対に避けては通れないのが「グラインド」の世界です。マスタークラフトマンのボブ・ボーケイ氏が「ウェッジフィッティングの心臓部」と呼ぶほど重要なこの要素。グラインドとは、クラブのソール(底面)の形状のことで、これが地面との接し方を決定し、クラブの性能を大きく左右します。
グラインド選びの基本は、以下の2つの要素をマッチングさせることです。
- あなたのスイングタイプ:クラブを鋭角に打ち込むタイプ(ダウンブロー)か、緩やかに払い打つタイプ(スイーパー)か。
- 主なプレー環境:地面が硬いコースが多いか、柔らかいコースが多いか。バンカーの砂は硬いか、フワフワか。
ここでは、ボーケイの代表的なグラインドの特徴と、どんなゴルファーに適しているかを一覧でご紹介します。
もし自分がどのタイプか分からない場合は、まず最も基準となるFグラインドか、汎用性の高いSグラインドから試してみるのが良いでしょう。そして、実際にコースで使ってみて「もっとフェースを開いて使いたいな」と感じればMグラインド、「もっとダフリのミスを防ぎたいな」と感じればDやKグラインド、というように自分の課題に合わせて変更していくのが、最適な一本にたどり着く近道です。
アマの味方、Dグラインドの特徴
数あるグラインドの中でも、SM7で一般ラインナップに加わって以来、私たちアマチュアゴルファーから絶大な支持を集めているのが「Dグラインド」です。なぜこれほどまでに人気があるのか、その秘密は「いいとこ取り」の設計思想にあります。
ゴルフショップでウェッジを見ていると、「バウンス角が大きいとやさしい(ダフリにくい)」「バウンス角が小さいと操作性が高い(フェースを開きやすい)」という説明をよく聞きますよね。これは原則として正しいのですが、多くのアマチュアは「ダフリのミスは嫌だけど、グリーン周りではフェースを開いてフワッとした球も打ちたい…」というジレンマを抱えています。この二律背反の願いを叶えてくれるのがDグラインドなのです。
Dグラインドのソールをよく見てみると、Fグラインドのようにバウンス角がしっかりと確保されている(ハイバウンス)一方で、Mグラインドのようにヒール側とトウ側が三日月状に大きく削られているのが分かります。この設計により、
- スクエアに構えて打つとき:ハイバウンスがしっかりと機能し、地面にヘッドが刺さるのを防いでくれる。
- フェースを開いて構えるとき:削られたヒール部分が地面との干渉を避けてくれるため、リーディングエッジが地面から浮き上がらず、ボールの下にスッとヘッドを滑り込ませることができる。
という、まさに「デュアル(二元的)」な性能を発揮します。
特に、アイアンショットでターフをしっかり取るような、クラブが鋭角に入る「ダウンブロー」軌道のゴルファーとの相性は抜群です。ダウンブローの人はインパクトが不安定になりがちですが、Dグラインドのハイバウンスがそのミスをしっかりカバーしてくれます。それでいて、いざという時にはロブショットという選択肢も残されている。この懐の深さが、多くのアマチュアにとって「安心感」と「攻める楽しさ」の両方を与えてくれるのです。もしグラインド選びに迷ったら、まずはDグラインドを試してみる。これは非常に合理的な選択だと思います。
バンカーが楽になるKグラインドとは
「グリーン周りのバンカーに入った瞬間、パーを諦めてしまう…」そんな経験、ありませんか? バンカーショットは多くのゴルファーにとって悩みの種ですが、その苦手意識をクラブが劇的に解消してくれるとしたら…? それを可能にするのが「Kグラインド」です。
Kグラインドは、ツアープロであるトム・カイト(Tom Kite)の要望から生まれたと言われており、その最大の特徴はボーケイのラインナップの中で最も広いソール幅と、最も強いソールの丸み(キャンバー)にあります。この「幅広」で「丸い」ソールが、まるで船の底のように機能し、砂の中に深く潜りすぎるのを防ぎ、爆発力を最大限に引き出してくれます。
バンカーショットの基本は「ボールの手前の砂を爆発させる(エクスプロージョン)」ことですが、多くの初心者はボールを直接打とうとしてトップしたり、逆にヘッドが砂に深く潜りすぎて脱出できなかったりします。Kグラインドは、多少アバウトにヘッドを入れても、広いソールが勝手に砂の上を滑って仕事をしてくれるのです。難しいテクニックは必要ありません。ただシンプルに、いつも通りスイングするだけで、驚くほど簡単にボールがバンカーから出てくれます。
しかし、そのデメリットを差し引いても、バンカーに苦手意識を持つゴルファーにとって、Kグラインドがもたらす恩恵は計り知れません。バンカー恐怖症を克服するための「特効薬」として、また、深いラフやぬかるんだライなど、タフなコンディションを乗り切るための「お守り」として、一本キャディバッグに忍ばせておく価値は十分にある、非常にユニークで頼りになるグラインドです。
結論:ボーケイ ウェッジ歴代評価の総括
ここまで、ボーケイウェッジの長い歴史と、各モデルが持つ個性、そして選び方のポイントについて、かなり深く掘り下げてきました。本当にたくさんのモデルと選択肢があって、改めてボーケイの奥深さを感じますね。
今回のボーケイ ウェッジ歴代評価を通じて、私自身が改めて確信したのは、「万人にとっての最高のウェッジ」は存在しない、ということです。大切なのは、歴代モデルの評価やテクノロジーを正しく理解した上で、「今の自分のゴルフ」に最適な一本を見つけ出すことです。
最後に、この記事のまとめとして、あなたにぴったりのボーケイを見つけるための最終診断ガイドをご用意しました。
この記事が、広大なボーケイの海の中から、あなたのゴルフを次のステージへと導いてくれる最高の相棒を見つけ出すための、信頼できる羅針盤となれば、これ以上に嬉しいことはありません。ぜひ、あなただけの一本を見つけて、ショートゲームをもっと楽しんでください!


