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パター長さと身長の最適解!スコアが変わる選び方

パター長さと身長の最適解! Column

こんにちは!ゴルフのスコアメイクを日々研究している、19番ホール研究所のthe19thです。

パッティングって、本当に奥が深いですよね。ドライバーの会心の一打も、アプローチのスーパーショットも、最後のパットが入らなければスコアにはなりません。全ストロークの約4割を占めると言われるだけに、ここを改善できるかがスコアアップの鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。そんなパッティングの唯一無二の相棒であるパターですが、「自分に合った長さって、結局何インチなんだろう?」と、一度は誰もが悩むテーマではないでしょうか。

ゴルフショップに行くと、当然のように34インチのパターがずらりと並んでいて、これが標準であり平均的な長さなんだな、と何となく認識している方が多いはずです。でも、その「標準」が本当に自分に合っているのか、ふと疑問に思うことはありませんか?特に、平均身長が欧米人と異なる私たち日本人、とりわけ女性ゴルファーの方は、市販されているパターがどうも長すぎると感じることが多いかもしれません。身長を目安にしたパター長さの決め方や、もっと簡単な計算方法があれば、最初の1本を選ぶ基準になるのに…と思いますよね。さらに言えば、プロは身長だけでなく、腕の長さの測り方を重視したり、利き目まで考慮して最適な一本を選んでいる、なんて話も耳にします。パターを短くするメリットとデメリットも気になるし、最近よく聞く「日本人に合う33インチ」という選択肢についても詳しく知りたい。そして何より、たかが長さと侮るなかれ、パターの長さを変えるとライ角にまで影響が出て、せっかくの調整が逆効果になることもあるなんて…考え始めると、もう何が正解なのか分からなくなってしまいます。

この記事では、そんな「パター長さと身長」に関するあらゆる疑問や不安を解消するために、基本的な目安から、一歩進んだプロの決め方まで、私が徹底的にリサーチした情報を分かりやすく、そして詳しく解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたにピッタリのパターを見つけるための、確かな知識と自信が身についているはずですよ。

  • 身長別のパター長さの目安がわかる
  • 身長以外の重要なチェックポイントを理解できる
  • プロが重視するパターの決め方がわかる
  • 自分に最適な長さに調整する方法がわかる
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パター長さと身長の基本|最適な目安

まずは何事も基本からですね。数あるパターのスペックの中で、最も直感的で、そして最初に基準とすべきなのが、やはりプレイヤーの「身長」です。ここでは、身長をベースにしたパター選びの考え方や、一般的に推奨されている長さの目安について、深掘りしていきましょう。この基本を押さえておくだけでも、明らかなオーバースペックやアンダースペックといった、パター選びで犯しがちな大きな失敗を、確実に避けることができるようになりますよ。

身長別パター長さの目安一覧表

「自分の身長だったら、まずどのくらいの長さのパターから試してみればいいんだろう?」これはパター選びにおける、最もシンプルで重要な第一歩ですね。世の中には様々なフィッティング理論がありますが、その全てのスタート地点となるのが、身長に基づいた標準的な指標です。以下に、一般的な目安として広く参考にされている対応表をまとめてみました。

この表は、あくまで統計的なデータに基づいた静的な基準ですが、自分がどのカテゴリーに属するのかを客観的に把握することは、無数にある選択肢を絞り込む上で非常に役立ちます。まずはご自身の身長と照らし合わせて、ターゲットとなる長さの範囲を確認してみてください。

【身長別】推奨パター長さの目安

身長 (cm) 推奨シャフト長さ (インチ) 特記事項
150cm 以下 28 ~ 30 インチ ジュニア・小柄な女性向け。大人用パターのカットだけでなく、ジュニア専用設計も視野に入れると良いでしょう。
151cm ~ 160cm 30 ~ 32 インチ 日本人女性の平均身長が含まれるゾーン。市販の標準品(34インチ)では長すぎることがほとんどです。
161cm ~ 170cm 32 ~ 34 インチ 日本人男性のボリュームゾーン。33インチか34インチかで、構えやすさが大きく変わる可能性があります。
171cm ~ 180cm 34 ~ 35 インチ 欧米の標準規格である34インチが最もフィットしやすい層。ただし、腕の長さによっては33インチも選択肢になります。
180cm 以上 35 インチ以上 長めのパターが必要。ただし、長すぎると前傾が浅くなりすぎるため、適度な前傾角度を維持できるかが鍵です。

※上記の数値は一般的な目安であり、個々の腕の長さ、アドレスの姿勢、ストロークの好みによって最適な長さは変動します。

例えば、身長168cmの私の場合、この表によれば32インチから34インチが推奨範囲となります。この時点で、35インチ以上のパターや、31インチ以下の極端に短いパターは、よほどの理由がない限り選択肢から外せるわけですね。このように、まずは自分に合った「物差し」を持つことが、賢いパター選びの第一歩と言えるでしょう。ただし、忘れてはいけないのは、これが絶対的な正解ではないということです。この後解説する、腕の長さや構え方といった要素を加味していくことで、この推奨範囲の中から、さらに自分だけの「ど真ん中」を見つけていくことになります。

パター長さの平均と標準的な34インチ

ゴルフショップのパターコーナーに足を運ぶと、最も多くのスペースを占めているのが、おそらく34インチのパターではないでしょうか。これが、現在のゴルフ市場における、いわゆる「標準」や「平均」とされる長さです。店員さんに相談しても、「まずは34インチから試してみては?」と勧められることが多いかもしれません。

では、なぜ34インチが標準なのでしょうか。その背景には、世界のゴルフ市場、特にPGAツアーで活躍するプロゴルファーたちの平均的な体格が大きく影響していると言われています。多くの海外ブランドは、欧米人の平均身長である170cm台後半から180cm前後のゴルファーをメインターゲットとして製品を設計・開発しています。そのため、彼らにとって最も構えやすく、パフォーマンスを発揮しやすい34インチという長さが、事実上のグローバルスタンダードとなっているわけです。

しかし、ここで私たち日本人ゴルファーは一度立ち止まって考える必要があります。「その世界標準は、本当に自分たちに合っているのか?」と。最新の国民健康・栄養調査によると、日本人成人男性の平均身長は約170cm、女性は約158cmです。この数値を先ほどの目安表に当てはめてみると、多くの日本人にとって34インチは明らかに「長すぎる」可能性があることがわかります。標準だから、平均だからという理由だけで34インチを選んでしまうと、無意識のうちに以下のような不自然な動きを強いられているかもしれません。

  • 長すぎるシャフトを避けるため、グリップをかなり余らせて握る(クラブのバランスが崩れる原因)。
  • パターに合わせてボールから遠く立つことになり、腕が伸びきってしまう。
  • 手元が体から離れすぎて脇が甘くなり、肩を使った安定したストロークではなく、手先だけで操作する「手打ち」になってしまう。

実際に、多くの日本人プロゴルファーが、自身の体格に合わせて33インチや、時にはそれ以下の短いパターを使用しています。彼らは「標準」ではなく「最適」を選んでいるのです。「みんなが使っているから」「お店に一番たくさんあるから」という同調圧力に流されず、「自分にとっての最適は何か?」という視点を持つことが、パター選びの迷宮から抜け出すための最初の鍵となります。

簡単なパター長さの計算方法

「身長別の目安表は参考になったけど、もっと具体的に自分に合った長さを割り出したい!」そう考えるのは当然のことだと思います。そんな時に役立つのが、よりパーソナルな数値を導き出すための、非常にシンプルで広く知られた計算方法です。

その基本的な考え方は、「基準となる身長から10cm変化するごとに、パターの長さを1インチ(約2.54cm)増減させる」というものです。非常に直感的で分かりやすいですよね。

この計算式を使うためには、まず「基準」を設定する必要があります。ここでは、市場の標準である「身長175cmの人に34インチがフィットする」と仮定して、いくつかのパターンを計算してみましょう。

計算例

  • 身長165cmの人の場合:
    基準より10cm低いので、34インチから1インチ短い「33インチ」が目安となります。
  • 身長185cmの人の場合:
    基準より10cm高いので、34インチから1インチ長い「35インチ」が目安となります。
  • 身長160cmの人の場合:
    基準より15cm低いので、34インチから1.5インチ短い「32.5インチ」が目安となります。

この計算式の限界と注意点
この方法は手軽で便利な一方、大きな弱点も抱えています。それは、個人の「腕の長さ」や「アドレス時の前傾姿勢」といった、極めて重要な身体的特徴が一切考慮されていないという点です。同じ身長でも腕の長い人もいれば、深くかがんで構える人もいます。そのため、この計算で算出された数値は、あくまで「最初の仮説」や「試打する際の出発点」として捉えるのが賢明です。この数値に固執しすぎず、最終的には自分の感覚や、より精密なフィッティング結果を優先することが大切かなと思います。

とはいえ、この計算式は、今使っているパターが自分にとって長すぎるのか、あるいは短すぎるのかを客観的に評価する上で、非常に有効なツールになります。例えば、身長165cmのあなたが34インチのパターを使っていて、どうもしっくりこないと感じている場合、この計算結果は「やはり1インチ長いのかもしれない」という仮説に、一つの論理的な裏付けを与えてくれるでしょう。そこから、「次は33インチを試してみよう」という、具体的な次のアクションに繋げることができるのです。

女性に最適なパター長さとは?

女性ゴルファーにとって、自分にぴったりのパターを見つける旅は、男性ゴルファー以上に困難を伴うことが多いかもしれません。その最大の理由は、市場に流通しているパターの多くが、残念ながら男性の平均的な体格を基準に設計されているという、紛れもない事実があるからです。

先にも触れましたが、日本人女性の平均身長は約158cm(20代では約154cmというデータもあります)。この身長を目安表に当てはめると、最適なパターの長さは30インチから32インチの範囲にあることがわかります。それに対して、店頭に並ぶ標準的なパターは34インチ、少し短めのラインナップでも33インチが主流です。これは、多くの女性にとって、市販のパターが2インチ(約5cm)以上も長すぎる可能性があることを意味しています。5cmといえば、グリップ1本分以上の長さです。これだけ長いと、構えた時にグリップエンドがお腹やウェアに突き刺さるように干渉してしまい、スムーズなストロークの物理的な妨げになってしまいます。

長すぎるパターは、他にも以下のような深刻なデメリットをもたらします。

  • 不自然なアドレス:長さに合わせてボールから不必要に離れて立つことになり、腕が突っ張ったり、前傾姿勢が浅くなったりと、不安定なアドレスを強いられます。
  • 距離感の不一致:パターが長いと、物理的な振り子の半径が大きくなるため、自分の感覚以上にヘッドが走ってしまいがちです。これにより、ショートパットでの繊細なタッチが出しにくく、距離感が合いにくくなります。
  • 手打ちの誘発:体格に合わない重く長いパターをコントロールしようとすると、肩や体幹を使った大きな筋肉でのストロークが難しくなり、結果的に手先だけでこねるような「手打ち」に陥りやすくなります。

解決策としての3つの選択肢

では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか。私は、主に3つの有効な選択肢があると考えています。

  1. レディース専用モデルを選ぶ:最近では、多くのメーカーが女性の体格を考慮したレディースモデルを開発しています。これらは、長さが32インチや33インチに設定されているだけでなく、ヘッド重量が軽めになっていたり、グリップが細めに設計されていたりと、トータルで最適化されています。選択肢は限られますが、最も手軽で確実な方法です。
  2. ユニセックスモデルのシャフトをカットする:デザインや打感が気に入ったパターが長い場合に有効な手段です。ゴルフ工房に持ち込めば、数千円程度で希望の長さにカットしてもらえます。ただし、後述するように、カットした場合はヘッドのバランス調整が必須になることを忘れてはいけません。
  3. ジュニア用パターを検討する:これは少し意外な選択肢かもしれませんが、特に身長150cm以下の小柄な女性にとっては、非常に理にかなった選択です。最新のジュニア用クラブは性能も高く、28インチや30インチといった、大人用にはない長さの選択肢があります。

「自分には選択肢がない」と諦める前に、これらの方法をぜひ検討してみてください。自分に合った長さのパターを手に入れることは、パッティングの楽しさを再発見し、スコアを劇的に改善させるための、最も効果的な投資の一つだと私は確信しています。

パター長さは前傾姿勢で変わる

これまで、身長という「垂直方向の長さ」を基準にパター選びを考えてきましたが、パッティングのアドレスは単に直立しているわけではありませんよね。ボールに対して構える際には、必ず上半身を前に傾ける「前傾姿勢」をとります。この前傾姿勢の「深さ」こそが、身長と同じくらい、いや、時として身長以上に最適なパター長さを左右する、極めて重要な幾何学的要素なのです。

考えてみれば、その理屈はとてもシンプルです。深くかがんでアドレスする人と、背筋を伸ばして直立に近い姿勢でアドレスする人とでは、同じ身長であっても、地面からグリップを握る「手の位置」までの垂直距離が全く異なってきます。つまり、パターに求められる実質的な長さが変わってくる、というわけです。自分のパッティングスタイルがどちらのタイプに近いのかを理解することは、より精密なパター選びに繋がります。

深い前傾姿勢(アグレッシブ・パッティングタイプ)

往年のタイガー・ウッズ選手のように、上半身を地面に近づけるように深く前傾させて構えるスタイルです。このタイプのアドレスには、以下のような特徴があります。

  • 視覚的メリット:目線がボールの真上、あるいはそれに近い位置に来るため、ターゲットラインを非常に正確に認識しやすいとされています。
  • 身体的特徴:背筋や腰への負担は大きくなりますが、体の回転を使いやすく、ヘッドをストレートに近い軌道で動かしやすいというメリットがあります。
  • 適合するパター長さ:地面と手の距離が近くなるため、身長の目安に対して比較的短めのパターがフィットします。例えば、身長175cmでも33インチのパターがしっくりくる、といったケースも珍しくありません。短いことでヘッドの操作性が高まり、自分の意図をダイレクトに伝えやすいと感じるかもしれません。

浅い前傾姿勢(リラックス・ストロークタイプ)

一方、腰への負担を軽減したいシニアゴルファーや、アダム・スコット選手のように、直立に近い姿勢から自然に腕を垂らして構えるスタイルです。

  • 視覚的メリット:全体を俯瞰するようにグリーンを見渡せるため、ロングパットの距離感が合いやすいと感じる人もいます。
  • 身体的特徴:体への負担が少なく、非常にリラックスした状態を保てます。肩や背中といった大きな筋肉を使った、振り子の原理に基づくスムーズなストロークをしやすいのが特徴です。
  • 適合するパター長さ:地面と手の距離が遠くなるため、身長の目安に対して標準か、少し長めのパターが必要になります。長いパターの慣性モーメントを利用して、ゆったりとした安定したリズムでストロークしたいプレイヤーに最適です。

自分のアドレスを客観視してみよう
自分がどちらのタイプなのか、意外と自分では分からないものです。スマートフォンのカメラで自分のアドレスを横から撮影してみたり、ゴルフショップの鏡の前で構えてみたりして、自分の前傾角度がどのくらいなのかを一度客観的にチェックしてみることをお勧めします。その上で、今のパターの長さが、その姿勢に対して窮屈ではないか、あるいは余りすぎていないかを確認してみると、新たな発見があるはずです。

パター長さと身長の最適化|プロの決め方

さて、ここからは基本編から一歩足を踏み入れて、応用編へと進んでいきましょう。身長やアドレスの姿勢といった基本的な要素に加えて、ツアープロや専門のフィッティングスタジオが、最高のパフォーマンスを引き出す一本を見つけ出すために、一体どのような点に注目しているのでしょうか。これまで以上にパーソナルで、科学的なアプローチを取り入れることで、「なんとなく合う」から「確信を持って合う」パター選びへとステップアップするための、より深い知識をご紹介します。

重要な腕の長さの測り方

もしあなたが、プロのフィッターに「パターを選ぶ上で最も重要な身体の数値は?」と尋ねたら、多くの人が「身長」ではなく、「腕の長さ」だと答えるかもしれません。それほどまでに、この要素はパターフィッティングの世界で重要視されています。なぜなら、同じ身長170cmの人が二人いたとしても、一方は腕が長く、もう一方は短いというケースはごく普通にあり、この個人差が、アドレスした時のグリップの高さに決定的な違いを生むからです。

この腕の長さを客観的な数値として捉えるために用いられるのが、「リスト・トゥ・フロア(Wrist to Floor)」という、まさにその名の通り「手首から床までの距離」を測定する方法です。これは、あなたが最もリラックスし、力みのない自然な状態でクラブを構えた時の、理想的なグリップの高さを知るための、極めて有効な指標となります。

リスト・トゥ・フロアの正しい測り方

この測定は非常に簡単ですが、正確に行うためにいくつかポイントがあります。

  1. ゴルフシューズを履く:必ず、普段ラウンドで履いているゴルフシューズを着用してください。シューズのソールの厚み分、身長が変わるため、裸足やスニーカーでの測定は不正確になります。
  2. 平らな場所に直立する:体の傾きがないよう、硬く平らな床の上で、背筋を伸ばしてまっすぐ立ちます。
  3. 腕を自然に垂らす:肩の力を完全に抜き、両腕をだらりと体の横に垂らします。この時、意図的に腕を伸ばしたり、肩を上げたりしないように注意してください。
  4. 手首のシワまでを測定:協力者に、床から手のひら側にできる一番はっきりとした手首のシワまでの垂直距離を、メジャーなどを使って正確に測ってもらいます。

例えば、身長は高いけれど、それ以上に腕が非常に長い「リーチの長い」タイプのゴルファーの場合、身長の目安通りに35インチのパターを選ぶと、腕が窮屈に曲がりすぎてしまうかもしれません。このような方には、むしろ標準的な34インチや、場合によっては33インチのパターの方が、腕が自然に伸びた美しいアドレスを作りやすく、腰への負担も軽減される、といったことが起こり得るのです。

世界的パターメーカーであるPING社は、古くからこの「リスト・トゥ・フロア」をフィッティングの重要な要素として取り入れており、独自のカラーコードシステムで、身長とこの数値を組み合わせた最適なライ角を導き出しています。「身長で選んだパターが、どうもしっくりこない…」その長年の悩みの原因は、身長と腕の長さのアンバランスにあるのかもしれません。一度この数値を測ってみることは、その呪縛からあなたを解放する、大きな一歩となる可能性があります。

利き目で変わるパターの選び方

パッティングは、単に体を動かす物理的な運動であると同時に、ターゲット(カップ)とボール、そして自分自身の位置関係を正確に認識する、高度な「視覚的情報処理」でもあります。そして、この情報処理の主役となるのが、あなたの「利き目」です。驚くかもしれませんが、この利き目が右か左かによって、理想的なボールの位置が変わり、ひいては最適なパターの長さまで変わってくるのです。

まずは自分の利き目を調べてみよう

自分がどちらの目を中心に物を見ているのか、知らない方も多いかもしれません。以下の方法で簡単に調べることができます。

  1. 両腕を前に伸ばし、両手で三角形の窓を作ります。
  2. その窓の中に、少し離れた場所にある目標物(時計やドアノブなど)を捉えます。
  3. 目標物を窓の中に捉えたまま、片目ずつ交互に閉じてみます。

目標物が窓の中にそのまま見え続ける方が、あなたの「利き目」です。逆の目を閉じた時には、目標物が窓から大きくズレて見えるはずです。

利き目と理想的なボール位置の関係

ゴルフの教本には、よく「ボールは左目の真下にセットするのが理想」と書かれています。これは、右打ちのゴルファーがターゲットラインに対してスクエアに構えた時、視線とターゲットラインが平行になりやすく、ラインを真っ直ぐに認識できるため、一般的にはセオリーとされています。しかし、これは主に左目が利き目の人にとっての理想論なのです。

  • 左目利き(右打ち)の場合:
    セオリー通り、ボールを左目の真下に置くことで、利き目がターゲットラインの真上に来るため、歪みのないクリアな視界でラインを読むことができます。このボール位置に自然にヘッドをセットできる長さが、あなたにとっての最適長となります。
  • 右目利き(右打ち)の場合:
    もしあなたが右目利きの場合、この「左目の下」セオリーは罠になる可能性があります。無理にボールを左足寄りに置こうとすると、利き目である右目でボールを見ようとして、無意識に顔(頭)が右に傾いたり、右肩が前に出てスタンスがオープンになったりします。これは、アドレス全体の歪みと、それに伴うミスの原因となります。右目利きの人は、むしろスタンスの中央寄りにボールを置く方が、利き目である右目で自然にラインを捉えることができ、スムーズなストロークに繋がります。

そして最も重要なのは、この「自分の利き目に合った最適なボール位置に、無理なく自然にパターヘッドを構えられる長さ」を選ぶ、ということです。パターが長すぎると、自然とボールは体から遠ざかり、左足寄りに置かざるを得なくなります。逆に短すぎると、ボールに近づきすぎて、スタンスの中央に置きにくくなります。自分の目という「センサー」が最も機能する場所にボールを置けるよう、物理的なツールであるパターの長さをアジャストしていく。この視点を持つことで、パッティングの再現性は劇的に向上するかもしれません。

パター長さとライ角の重要な関係

パターの長さを選ぶ際、多くのゴルファーが見落としがちでありながら、実は方向性を決定づける上で極めて重要な要素、それが「ライ角」です。長さとライ角は、いわば「一心同体の関係」にあり、片方だけを変更しても最適なセッティングは完成しません。この二つのバランスが崩れると、いくら完璧なストロークをしても、ボールはカップを逸れていってしまうのです。

ライ角とは、パターを地面にソールした(置いた)時に、シャフトと地面(ソール面)が作る角度のことです。この角度がゴルファーのアドレスに対して適正である時、パターのソールは地面にピッタリと均一に接地します。しかし、長さが合っていないパターを使うと、このバランスが崩れ、ソールの一部が浮き上がってしまうのです。

ライ角のズレが引き起こすミスのメカニズム

  • パターが長すぎる(or ライ角がフラットすぎる)場合:
    プレイヤーは無意識にボールから遠く立つことになります。その結果、パターのヘッドはトウ側(先端)が下がり、ヒール側(手前)が浮き上がった「トウダウン」の状態になります。この状態でインパクトを迎えると、フェースの芯よりもヒール寄りでヒットしやすくなり、フェースはインパクトの衝撃で閉じる方向(左を向く方向)に回転します。結果として、ボールは狙ったラインよりもへ打ち出されてしまいます。
  • パターが短すぎる(or ライ角がアップライトすぎる)場合:
    逆に、プレイヤーはボールに近づきすぎて窮屈なアドレスになります。その結果、ヘッドはヒール側が下がり、トウ側が浮き上がった「ヒールダウン」の状態になります。この状態でインパクトすると、今度はフェースの芯よりもトウ寄りでヒットしやすくなり、フェースは開く方向(右を向く方向)に回転します。結果、ボールは狙ったラインよりもへ打ち出されてしまうのです。

「引っ掛け」や「プッシュアウト」の原因はライ角かも?
もしあなたが、特定の方向に外すミス(例:ショートパットでいつも左に引っ掛けてしまう)に悩んでいるのであれば、それはストロークの技術的な問題ではなく、単にパターのライ角が合っていないことが原因である可能性も大いに考えられます。

長さとライ角の調整はワンセットで

この関係性を理解すると、パターの長さを変える際には、必ずライ角のチェックと調整が必要であることがわかります。例えば、34インチのパターを33インチにシャフトカットした場合、ボールに近づいて構えることになるため、元のライ角のままではトウ側が浮きやすくなります。そのため、角度をより垂直に近づける「アップライト」な方向への調整が必要になるのです。逆に、パターを長くする場合は、より平らにする「フラット」な調整が求められます。ほとんどのゴルフ工房では、専用の機械を使って数度の範囲でライ角を調整することが可能です。長さの調整を行う際は、必ずこのライ角調整もセットで依頼することを強くお勧めします。

パターを短くするメリットと注意点

この記事を読み進める中で、「もしかしたら、自分のパターは長すぎるのかもしれない。思い切って短くしてみようか」と考え始めている方も少なくないと思います。特に、多くの日本人ゴルファーにとって、標準的な34インチから1インチ短い33インチ、あるいはそれ以下に調整することは、多くのメリットをもたらす可能性があります。

パターを短くするメリットの深掘り

  • 身体との一体感と操作性の向上:パターが短くなると、自然と前傾が深まり、腕が体に近づきます。これにより、両肘が軽く曲がって体側に引き締まり、肩・腕・手元でできる五角形(または三角形)がコンパクトになります。この「体との一体感」こそが、手先だけの無駄な動きを抑制し、体幹を主軸とした、再現性の高い振り子運動を可能にするのです。まるで、自分の腕の延長線上でボールをコントロールしているかのような、ダイレクトな操作感を得られるかもしれません。
  • 視覚的な正確性の向上:ボールに近づいて構えることになるため、必然的に目線はボールの真上に近づきます。これにより、ターゲットラインをより正確に、そして歪みなく認識することができ、エイミング(目標設定)の精度が向上します。特に、短い距離のパットで「真っ直ぐ構えられているか不安」という悩みを持つ方には、大きな効果が期待できます。

知っておくべき注意点とプロの対策

しかし、もちろん良いことばかりではありません。安易にシャフトをカットするだけでは、かえってパターの性能を損なってしまう危険性があります。最も重要な注意点は、「クラブバランス(スイングウェイト)の変化」です。

シャフトを1インチカットすると、クラブの総重量が軽くなるだけでなく、ヘッドの重みを感じにくくなる「ヘッドバランスが軽くなる」という現象が起きます。例えば、元々D2だったバランスが、カット後にはC5やC6といった、非常に軽いバランスになってしまうのです。こうなると、ストローク中にヘッドの重みを感じて振り子運動をすることが難しくなり、かえって手打ちになったり、打感がスカスカに感じられたりします。

シャフトカット後のバランス調整は必須!
この問題を解決するため、プロやクラフトマンは必ずバランスを元に戻す(あるいは好みのバランスにする)ための調整を行います。主な方法は以下の通りです。

  • ヘッドへの加重:最も一般的な方法が、パターのソール(底面)に鉛のテープを貼ることです。1インチのカットで失われるバランスを補うには、一般的に約10g〜12gの重量追加が必要とされています。最近のパターには、交換可能なウェイトスクリューが装着されているモデルも多く、より重いウェイトに交換することで、スマートに重量を調整できます。
  • カウンターバランス:グリップエンド側に重量を追加する「カウンターバランス」という手法もあります。これにより、クラブ全体の重量は増しますが、手元の安定感が増し、ストローク中のヘッドのブレを抑制する効果が期待できます。

これらの調整は専門的な知識と経験を要するため、信頼できるゴルフ工房に相談するのが最も確実です。単に「1インチ切ってください」と依頼するのではなく、「1インチ短くして、バランスは元の感じに近づけてください」と伝えることが、調整を成功させるための重要なポイントです。

日本人に合う33インチパターの選び方

近年、アマチュアゴルファーの間でも、「33インチパター」の存在感が増してきています。これは、単なる流行ではなく、多くの日本人ゴルファーが、自身の体格と市販品の標準スペックとの間に存在する「ギャップ」に気づき始めた結果だと、私は考えています。

なぜ「33インチ」という具体的な数字が、これほどまでに注目されるのでしょうか。その根拠は、やはり日本人男性の平均身長にあります。平均身長が約170cmの日本人男性にとって、海外ブランドが想定する175cm〜180cmのゴルファー向けに設計された34インチのパターは、統計的に見て、やはり1インチ程度長いケースが多いのです。この「たった1インチ(約2.54cm)」の差が、アドレスの快適性やストロークの安定性に、想像以上の影響を与えます。

33インチがもたらす、アドレスの「最適化」

これまで34インチのパターを、知らず知らずのうちにグリップを短く握ったり、不自然な姿勢で構えたりしていたゴルファーが、初めて33インチのパターを手に取ると、以下のようなポジティブな変化に驚くことがよくあります。

  • 自然で力みのない腕の形:腕が突っ張ることなく、両肘が適度に曲がり、リラックスした状態で自然に腕を垂らした位置でグリップできる。
  • 理想的なボールと目の位置関係:無理にかがんだり、背伸びしたりすることなく、スッと構えただけでボールが目の真下、あるいはそれに近い理想的なポジションに来る。
  • 安定した前傾姿勢:腰や背中への負担が少ない、最も力の入る快適な前傾角度をキープしやすくなる。

つまり、33インチパターは、多くの日本人ゴルファーにとって、パッティングのパフォーマンスを最大限に引き出すための「理想的なアドレス」を、物理的にサポートしてくれるツールとなり得るのです。アドレスが安定すれば、ストロークの再現性が高まるのは必然。結果として、方向性や距離感の向上に繋がり、スコアメイクに大きく貢献してくれる可能性を秘めています。

賢い33インチパターの選び方のポイント

では、実際に33インチのパターを選ぶ際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

  1. メーカーによる「長さの定義」の違いを認識する:実は、パターの長さの測定方法には、シャフトの軸線上で測る「ヒールエンド法」と、ソールを60度のプレートに当てて測る公式ルールの「60度法」があります。メーカーによって採用する基準が異なる場合があり、同じ33インチの表記でも、実際の有効長が微妙に違うことがあります。可能であれば、複数のメーカーのものを実際に構えて比較するのがベストです。
  2. ヘッド重量とのバランスをチェックする:一般的に、シャフトが短くなるほど、ヘッドの重さを感じにくくなります。そのため、33インチのパターには、34インチの標準的なヘッド重量(約340g前後)よりも、やや重め(350g以上)のヘッドが装着されているモデルの方が、ストロークの安定感を得やすい傾向があります。
  3. 必ず試打でフィーリングを確認する:スペック上の数値はあくまで参考です。最終的には、実際にグリーンでボールを打ってみて、「構えやすいか」「振りやすいか」「打感は心地よいか」といった、あなた自身の感覚が最も重要な判断基準となります。できれば、今お使いのパターと打ち比べて、その違いを体感してみてください。

「33インチが良いらしい」という情報を鵜呑みにするのではなく、それを一つの有力な「仮説」として、自分自身の体と感覚で検証していく。そのプロセスこそが、最高の相棒を見つけ出すための、最も確実な道筋だと私は思います。

パター長さと身長の最適な答え

さて、長い時間をかけてパターの長さと身長の関係性について、様々な角度から掘り下げてきましたが、いかがでしたでしょうか。ここまで読んでくださったあなたなら、もうお分かりのはずです。

「パター長さと身長の最適な答え」とは、残念ながら「身長〇〇cmなら、〇〇インチが絶対の正解です」というような、単純な公式で導き出せるものではありません。もしそうであれば、誰もパター選びで悩むことはないでしょう。最適な答えは、身長という出発点から、あなた自身のユニークな身体的特徴と感覚を掛け合わせていく、複雑で、しかし非常に面白い「方程式」を解く過程の中にこそ存在します。

これまで解説してきた全ての要素を統合し、あなただけの一本を見つけ出すための、具体的なアクションプランを3つのステップにまとめてみました。これこそが、この記事の結論であり、私があなたに提案する「最適な答えの見つけ方」です。

自分だけの最適解を見つけるための3ステップ

ステップ1:徹底的な自己分析(現状の把握)

  1. 身体データの測定:まずは、あなたの基本的な身体データを正確に把握します。「身長」「リスト・トゥ・フロア(手首から床までの距離)」、そして「利き目」。これらが、あなたのパター選びの羅針盤となります。
  2. 現状のパターとアドレスの確認:今お使いのパターの「公称の長さ」を調べます。その上で、実際に構えてみて、「グリップを余らせていないか」「ボールは目のどの位置にあるか」「前傾姿勢は快適か」などを、鏡やスマホの動画を使って客観的にチェックします。

ステップ2:仮説の構築と検証(ショップでの試打)

  1. 理想の長さの仮説を立てる:ステップ1で得た情報(身長、腕の長さ、構え方の好みなど)を元に、「自分には〇〇インチが合うのではないか?」という仮説を立てます。(例:「身長168cmで腕は標準的、少し深めの前傾が好きだから、33インチがベストかもしれない」)
  2. 仮説を徹底的に検証する:ゴルフショップのパターコーナーで、仮説に基づいた長さのパターを、時間をかけて試打します。この時、必ず普段のルーティンと同じように構え、ボールを打ってみてください。長さだけでなく、ヘッド形状やネック形状が違うものも試すことで、自分のストロークタイプとの相性も見えてきます。

ステップ3:最終的な最適化(フィッティングと調整)

  1. 購入と微調整:「これだ!」と思える一本が見つかったら、購入します。そして、必要であれば専門の工房でライ角を自分のアドレスに合わせて微調整してもらいます。この一手間が、パターの性能を100%引き出すために不可欠です。
  2. 専門家によるフィッティング(オプション):もし、より完璧を期すのであれば、SAM PuttLabのような高度な解析機器を備えた専門のフィッティングスタジオを訪れるのも素晴らしい選択です。(出典:キャロウェイゴルフ公式サイト オデッセイ パット・ラボ)インパクト時のフェースの向きや打点のズレといった、人間の目では捉えられないミリ単位のデータを基に、専門家が最適なスペックを提案してくれます。

パッティングの悩みは、しばしば技術的な問題、つまり「自分の腕が悪い」と考えがちです。しかし、実はその多くが、単に「身体に合っていない道具を使っている」という物理的な不適合が原因であるケースは、驚くほど多いのです。

あなたの身体に完璧にフィットし、まるで腕の延長線上にあるかのように感じられるパターと出会えた時、あなたは初めて、ラインを読むことやタッチを合わせることといった、パッティング本来の楽しさと奥深さに集中できるようになるでしょう。その一本を見つけ出すための投資は、どんな高価なドライバーを買うよりも、あなたのスコアを最も確実、かつ劇的に改善してくれる、最高の投資となるはずです。

 

the19th

40代、ゴルフ歴20年の「ギアオタク」サラリーマンです。ベストスコアは73( HC10)。「シングル」の称号まであと一歩のところで、長年足踏みしています。
「その1打は、ギアで縮まる」を信念に、これまで試打してきたクラブは数知れず。給料のほとんどは最新ギアに消えていきます。
このブログは、20年間こだわり続けた「ギア選び」の記録です。

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