こんにちは、19番ホール研究所のthe19thです。
「ゼロトルクパター、気になる。でもあの独特な構え方だけはどうしても好きになれない」。そう思ったまま、なんとなく買わずに来てしまった人、けっこう多いんじゃないでしょうか。私もまったく同じでした。
そこに現れたのが、オデッセイの「Square 2 Square TRI-HOT(スクエア・ツー・スクエア トライホット)」です。ゼロトルクなのに、シャフトが地面に対して真っすぐ挿さっている。つまり「変な構え方をしなくていいゼロトルク」という、ちょっと反則みたいな一本ですね。
ただ、いざ調べ始めると疑問だらけです。価格はいくらなのか。最大のライバルであるL.A.B. Golfと何がどう違うのか。#7、ジェイルバード、ロッシー、どれを選べばいいのか。そもそも今から買えるのか。
この記事では、メーカー発表と国内メディアの試打解説をひとつずつ確認しながら、そのあたりを整理していきます。読み終わるころには、あなたにとってこのパターが「買う価値のある一本」なのか「見送っていい一本」なのか、自分の言葉で判断できる状態になっているはずですよ。
・発売日と価格、そして「数量限定発売」だったことによる今の入手事情
・ゼロトルクなのに普通に構えられる理由(浅重心という発想)
・L.A.B. Golfとの設計思想レベルの違いと、選び分けの基準
・#7/ジェイルバード/ロッシー/クルーザー、モデル別の向き不向き
・実在する試打解説に基づく評価と、正直なデメリット
・2026年に登場した後継思想モデルとの比較
オデッセイ Square 2 Square TRI-HOTの基本情報|発売日・価格・ラインアップ
まずは土台になる情報からいきましょう。ギアの話は、ここが曖昧なまま進むとだいたい後で困ります。
日本での発売日と価格(税込)
キャロウェイゴルフの発表によると、日本国内での発売は2025年11月7日。そして見落とされがちなのですが、これは数量限定での発売でした。ここ、後でけっこう効いてきます。
メーカー希望小売価格は以下のとおりです。
| モデル | 形状 | 価格(税込) |
|---|---|---|
| #7 | ツノ型マレット | 82,500円 |
| JAILBIRD | ストライプの大型マレット | 82,500円 |
| ROSSIE | 伝統的なかまぼこ型マレット | 82,500円 |
| JAILBIRD CRUISER | 38インチの中尺仕様 | 89,100円 |
「うわ、やっぱり8万円超えか…」というのが正直な感想ですよね。私も最初にそう思いました。ただ、この価格には一応の理由があります。
本モデルはオデッセイの中でもプレミアム帯にあたる「TRI-HOT」の名を冠したシリーズです。ヘッドにはタングステン・ステンレス・アルミニウムという3種類の金属を組み合わせたマルチマテリアル構造を採用していて、特に高比重で高価なタングステンをフェース側に使っています。加えて、フェースのインサートはAIによる約15,000回のシミュレーションと72種類のプロトタイプ制作を経て完成したもの。素材コストも開発コストも、そりゃ乗ってくるよねという構成なんです。
「数量限定」だったから、今の入手ルートは少し特殊
ここが、今このパターを検討している人にとって一番大事なポイントかもしれません。
通常のレギュラーモデルであれば、発売から時間が経つほど値ごなれして買いやすくなります。ところが数量限定モデルは違って、タイミングを逃すと新品が店頭から消え、逆に中古相場のほうが動くという現象が起きやすいんですね。
ですので、現時点で検討するなら次の3ルートを並行して見ておくのが現実的かなと思います。
1. メーカー公式オンラインストア
在庫の有無がいちばん確実にわかります。状態も新品なので安心感は最上位。
2. 大型ゴルフショップの店頭
試打ができるかどうかが最大の価値。パターは数値より「構えたときの見え方」が効くクラブなので、可能なら実物を握ってほしいです。
3. 中古市場
限定モデルは中古の流通量そのものが少なめです。見つけたときは、フェースインサートの状態とグリップの摩耗を必ず確認してください。インサート系のパターは、ここが痩せると打感が変わります。
ここに記載しているのは発表時点のメーカー希望小売価格です。実際の販売価格や在庫状況は、取扱店・時期・為替などによって変わります。購入を検討される際は、必ずキャロウェイゴルフ公式サイト(オデッセイ)や、お近くのゴルフショップで最新の情報をご確認ください。
他のプレミアムパターと比べて高いのか、安いのか
「8万円台」という数字だけ見ると高く感じますが、プレミアムパターというカテゴリーの中で見ると、実はそこまで突出しているわけではありません。
| ブランド/モデル | 価格帯の位置づけ | 買い方の特徴 |
|---|---|---|
| Odyssey S2S TRI-HOT | 82,500円〜(税込・発表時) | 量販店で試打してそのまま購入しやすい |
| L.A.B. Golf | S2S TRI-HOTより高い価格帯が中心 | フィッティング前提。取扱店が限られる |
| スコッティキャメロン/ベティナルディなど | おおむね同等〜やや下の価格帯 | 削り出し中心。モデル数が多く選択肢が広い |
削り出しパターの世界観や価格の考え方については「スコッティキャメロンは何が良い?と検索されているあなたへ」でも触れています。プレミアムパターに何を求めるのかを整理したい人は、あわせて読んでみてください。
ゼロトルクなのに構えやすい理由|浅重心という発想の転換
ここからが、このパターの本当に面白いところです。値段の話をした直後で恐縮ですが、価値の中身はこちらにあります。
そもそも「ゼロトルク」ってどういう意味?
おさらいしておきましょう。ゼロトルク(ストロークバランス)とは、ざっくり言えば「ストローク中にフェースが勝手に開いたり閉じたりしようとする力を、構造的に打ち消してしまう設計」のことです。
普通のパターは、手のひらに乗せてやじろべえのようにバランスを取ると、フェースが真上を向いたり(フェースバランス)、トゥが下がったり(トゥハング)します。これはヘッドの重心とシャフトの軸がズレていることの現れで、ストローク中に回転しようとする力=トルクが発生します。ゼロトルクは、この力を極力ゼロに近づけたパター、という理解でだいたい合っています。
メリットは明快で、フェースをスクエアに保つための余計な操作がいらなくなること。狙ったラインにそのまま出しやすくなります。
ただし、ここに大きな副作用がありました。重心とシャフト軸を一致させるために、シャフトをヘッド後方に挿したり、かなりのハンドファーストで構えることを前提にした設計が必要だったんです。これがゼロトルクの「構えにくさ」の正体でした。
ゼロトルクという仕組み自体をもう少し掘り下げたい人は、「話題のゼロトルクパター徹底解説!仕組みと主要メーカー比較ガイド」を先に読んでおくと、この先の話がすっと入ってくると思います。
重量の約80%をフェース側に。極端な浅重心が生んだブレークスルー
オデッセイがこの課題に出した答えが、「浅重心(フェース寄りの重量配分)」でした。
普通のマレットは、ミスヒットへの強さ=慣性モーメントを稼ぐために、ヘッド後方へ重量を持っていく「深重心」を目指します。S2S TRI-HOTはその真逆をやっています。
具体的には、ヘッド後方の赤い部分に軽いアルミニウム、ホーゼル付近にステンレス、そしてインサート周囲とソール前方に高比重のタングステンを配置。さらにアルミ側のソールには大きな窪みを設けて、後方の重量を徹底的に削っています。この結果、ヘッド重量の約80%がフェース側に集中するという、かなり特殊な重量配分が実現しました。
重心がフェース面のすぐ後ろまで来ると何が起きるか。シャフトを傾けなくても、重心とシャフト軸を一致させられるんです。だから、シャフトはフェース面のすぐ近くに、地面に対してほぼ真っすぐ挿さっている。見た目は完全に「普通のセンターシャフトパター」になりました。

ゼロトルクの恩恵はそのままに、構え方は普段どおり。これ、地味に見えてパター設計としてはかなり大きな転換だと思います。
1. 極端な浅重心:タングステンをフェース寄りに集中させ、重心を限界まで浅くした。
2. シャフトリーンの排除:シャフトを傾ける必要がなく、自然な手の位置で構えられる。
3. 心理的な効果:特殊な構えを意識しなくていいので、アドレスでの迷いが減り、ラインに集中しやすい。
Ai-DUALインサートと新F.R.D.グルーブ|転がりを作る2つの技術
パッティングの打感は、単なる気持ちよさの話ではありません。ボールがフェースに乗っている時間や当たりの強弱を手に伝えてくれる、距離感のための情報源です。ここを軽視すると、3パットが増えます。
S2S TRI-HOTに初搭載されたのが「Ai-DUAL・インサート」です。
前作Ai-ONEからの進化点
前作のAi-ONE系インサートは、AIが設計した複雑な形状のアルミボディの上にウレタン樹脂を乗せる構造でした。オフセンターヒット時のボール初速を安定させるという点では画期的でしたが、その分「金属的な弾き感がある」と感じる人もいたようです。
Ai-DUALインサートは、アルミボディを使わずウレタン樹脂だけの2層構造にしています。表面には軟らかい樹脂、内側には硬い樹脂を配置し、しかもその境目を不均一で複雑な曲面で貼り合わせているのがポイント。この設計は、約15,000回のシミュレーションと72種類のプロトタイプ制作を経て決まったと発表されています。
結果として、インパクトの表面はやわらかく、その奥にはしっかりした芯がある、という二段構えのフィーリングになりました。
19度の溝が生む、即順回転
フェース表面には、新開発の「New F.R.D.(Forward Roll Design)グルーブ」が刻まれています。フェース面に対して19度の角度をつけた独特の溝で、インパクトでボールに食い込み、バックスピンや余計な回転を抑えます。
パッティングのボールは、インパクト→スキッド(滑る)→ロール(転がる)という順で進みます。この溝は、スキッド段階での順回転の入り方を良くしてくれる、というのがメーカーの主張です。
順回転が早く入ると、ボールが芝目に負けにくくなり、ラインに素直に乗ります。特に効いてくるのは、タッチが繊細な下りのパットと、外したくないショートパット。「転がり出しの1メートル」がきれいだと、残りの距離感も揃ってくるというのは、多くのゴルファーが実感しているところだと思います。
ショートパットのミスに悩んでいる人は、パター選びの前提条件そのものを整理しておくと効果が高いです。「ショートパットに強いパターの選び方:ミスを減らす秘訣」もあわせてどうぞ。
スペックとヘッドの重さ|数字の意味を読み解く
テクノロジーを理解したところで、実際のスペックを見ていきましょう。パターは長さや重さがフィーリングに直結するデリケートなクラブなので、ここは丁寧にいきます。
確認できている主なスペック
| 項目 | 内容 | ストロークへの影響 |
|---|---|---|
| ラインアップ | #7/JAILBIRD/ROSSIE/JAILBIRD CRUISER | 形状とアライメントの好みで選び分ける |
| ヘッド素材 | タングステン/ステンレス/アルミニウムの3素材 | 重量配分の自由度が上がり、浅重心を実現 |
| 重量配分 | ヘッド重量の約80%がフェース側 | シャフトを傾けずにゼロトルク化できた最大の理由 |
| インサート | Ai-DUAL・インサート(ウレタン2層構造) | やわらかさと芯のある手応えを両立 |
| フェース溝 | New F.R.D.グルーブ(フェース面に対して19度) | スキッドを抑え、順回転を早く入れる |
| シャフト | STROKE LABシャフト 通常3モデル:120g台/CRUISER:140g台 | 重量級で手先の暴れを抑え、テンポを安定させる |
| 長さ | 34インチ(JAILBIRD CRUISERは38インチ) | 身長と構え方に合うかを必ず確認したい |
| グリップ | 太めのピストル形状/断面は五角形(ホームベース型) | 指先でフェースの向きを感じ取りやすい |
| アライメント | トップブレードに十字型のライン | ボールにもターゲットにも合わせやすい |
ネット上には、このモデルのロフト角やヘッド重量について、出所のはっきりしない数値がいくつも流通しています。私が確認した範囲では、公式に明示されているのは上の表の内容までです。
細かい数値が判断材料になる人ほど、公式サイトか販売店で現物の仕様を確認してから決めてください。ここを曖昧にしたまま買うと、後から「思っていたのと違う」となりがちです。
重量級シャフト「STROKE LAB」の狙い
個人的にいちばん注目しているのが、シャフトの重量設定です。通常3モデルで120g台、中尺のJAILBIRD CRUISERにいたっては140g台。一般的なパター用スチールシャフトと比べても、はっきり重い部類ですね。
なぜ重くしたのか。これはゼロトルクという特性と、たぶん深く関係しています。
フェースの開閉が起きにくいということは、裏を返すとストローク中にヘッドの存在を感じにくいということでもあります。人によっては「ヘッドが今どこにあるかわからない」「不安になって手先で操作してしまう」という状態になりかねません。
そこでシャフト側に重さを持たせて、クラブ全体の慣性を上げる。すると、手先の小さな筋肉ではなく、肩や体幹といった大きな筋肉でゆったり動かすほうが自然に感じられるようになります。要するに、道具の側からテンポを整えにいっているわけです。プレッシャーのかかる場面ほど効いてくる設計だと思いますよ。
フェース管理を助ける五角形グリップ
グリップも専用設計です。ツアーで人気のピストル形状をベースにしつつ、断面がホームベースのような五角形になっています。太めですが、角がしっかり立っているので握った瞬間に向きがわかる。指先の情報量が多いタイプですね。
ゼロトルクによる「フェースが勝手にターゲットを向いてくれる」性能と、グリップによる「今どこを向いているか手でわかる」感覚。この2つが噛み合うと、フェース管理はかなり楽になります。試打した解説者が「グリップだけ欲しいくらい」と表現していたのも、なんとなくわかる気がします。
モデル別の特徴と選び方|#7・ジェイルバード・ロッシー・クルーザー
ラインアップはどれもオデッセイの人気形状がベースです。性能の差というより「何を見て構えたいか」の差だと考えると、選びやすくなりますよ。
#7(セブン)|横のラインで合わせたい人へ
もはや説明不要、オデッセイの象徴とも言えるツノ型形状です。マレットらしい安定感と、シャープな見た目の両立がうまい。
今回のモデルでは浅重心設計のおかげで、過去のS2Sモデルにあったツノとツノをつなぐブリッジが不要になりました。結果として、本来の#7らしいスッキリした形が戻ってきています。ここは古くからのファンにとって嬉しいポイントじゃないでしょうか。
最大の武器はアライメント性能です。トップブレードの十字ラインと、後方に伸びる2本のツノがガイドとして機能し、構えた瞬間に「真っすぐ向けているか」が一目でわかる。セットアップに自信が持てると、ストロークも自然と落ち着きます。
横方向のラインで目標に合わせるタイプの人には、まずここから試してほしいモデルです。
JAILBIRD(ジェイルバード)|縦のラインで真っすぐ動かしたい人へ
ツアーで実績を積み上げてきた、縞模様が印象的な大型マレット。今作は赤と黒のツートンで、かなり存在感があります。
この強いコントラストのストライプは、脳に対してフェースの向きを強烈に意識させます。ストローク中に少しでも開閉があれば、縞のズレとしてはっきり見えるので、無意識にスクエアを保とうとする動きが出やすいんですね。
この視覚効果と、物理的に開閉を抑えるゼロトルクが重なると、「ターゲットに合わせて、真っすぐ引いて、真っすぐ出す」という極めてシンプルな思考でパッティングができるようになります。
ヘッドを水平移動させるイメージを持ちたい人、そして「もう何も考えたくない、機械のように打ちたい」という段階まで来てしまった人には、かなり刺さる一本だと思います。
ROSSIE(ロッシー)|ラインに頼らず、感覚で構えたい人へ
今回のシリーズで、個人的にいちばん興味深いのがこのロッシーです。伝統的な、丸みを帯びたかまぼこ型のマレットですね。
#7やジェイルバードのような派手さはありません。でも、オーソドックスで飽きのこない形には、時代を超えて支持される理由があります。ラインをあまり見たくない、ファジーに構えたいというタイプの人に向く形状です。
S2Sシリーズに加わったロッシーの面白さは、マレットの安心感と、ブレードに近い操作感が同居している点にあります。通常このクラスは後方に重量を置いて安定性を稼ぎますが、S2S TRI-HOTはあえて重心を前に置いている。だからヘッドを自分の意思で動かしている感覚が残ります。
特に、こんな人にはハマる可能性が高いです。
・大型マレットの見た目にどうしても抵抗がある
・ゼロトルクの安定性は欲しいが、操作している感覚も残したい
・イン・トゥ・インのアーク軌道でストロークするイメージを持っている
・「コツン」と当てにいく感覚でタッチを出したい
そもそもマレット型が自分に合うのか迷っている段階なら、「マレット型パターが合う人はどんな人?特徴と選び方を解説」で相性を確認してからのほうが、遠回りせずに済むと思います。
JAILBIRD CRUISER|手元をもっと安定させたい人へ
38インチの中尺仕様で、シャフト重量は140g台。通常モデルよりさらに重く、長い構成です。
中尺は、手首の余計な動きを抑えたい人や、ショートパットで手が縮こまってしまう人にとって有効な選択肢です。ただし長さが変わると構え方そのものが変わるので、これは絶対に試打してから決めてください。カタログスペックだけで中尺を買うのは、正直おすすめしません。
迷ったときの判断早見表
| あなたのタイプ | おすすめモデル | 理由 |
|---|---|---|
| 横のラインで目標に合わせたい | #7 | 十字ライン+2本のツノでスクエアが取りやすい |
| 縦のラインが欲しい/真っすぐ動かしたい | JAILBIRD | ストライプがフェースの向きを強く意識させる |
| ラインは要らない/感覚で構えたい | ROSSIE | シンプルな形状で操作感が残る |
| 手元をもっと固定したい | JAILBIRD CRUISER | 38インチ+140g台シャフトで手先の動きを抑制 |
L.A.B. Golfとの違いを比較|思想レベルで別物です
ゼロトルクというカテゴリーにおいて、L.A.B. Golfがパイオニアであることに異論を唱える人はいないと思います。だからこそ、後発のオデッセイが何をどう変えたのかは、いちばん気になるところですよね。
スペック比較だけでなく、その背景にある考え方まで踏み込んでみます。
| 比較項目 | Odyssey S2S TRI-HOT | L.A.B. Golf |
|---|---|---|
| 設計思想 | 誰でも違和感なく使えるゼロトルク | 個々に最適化されたライ角バランス |
| 構え方 | 自然な手の位置(強制なし) | ハンドファースト前提の構え |
| シャフトの傾き | なし(ほぼ垂直) | あり(設定ライ角に依存) |
| 重心設計 | 浅重心(フェース側に約80%) | ライ角バランスに基づく設計 |
| フェース/打感 | ウレタン2層インサート(やわらかめ) | 金属系中心(ソリッドな傾向) |
| 買い方 | 量販店で試打して購入しやすい | フィッティング・オーダーが前提になりやすい |
「ゴルファーを合わせる」か「ゴルファーに合わせる」か
この表から見えてくるのは、両者のアプローチが根本から違うということです。
L.A.B. Golfの核心は「ライ角バランス」という考え方にあります。ゴルファー一人ひとりの身長や構え方に合わせて最適なライ角を決め、そのライ角で構えたときに初めて完璧なゼロトルクが成立するよう、一品一様で仕上げていく。だからフィッティングが前提になります。
言い換えると、パターがゴルファーに「正しい構え方」を教えてくれるという側面があるわけです。合った人にとっては、これ以上ない道具になります。
一方、オデッセイのS2S TRI-HOTは「今のあなたの構え方を変えさせない」という方向に振り切っています。浅重心という力技で、特別な意識をしなくてもゼロトルクの恩恵が受けられるようにした。世界中に製品を届けるメーカーらしい、間口を広げる発想ですね。
結局、どちらを選べばいいのか
優劣ではなく、相性の問題です。判断軸を整理しておきます。
S2S TRI-HOTが向く人
・今の構え方を変えたくない
・フィッティングに時間や費用をかけたくない
・近所の店で試打してその日に決めたい
・やわらかい打感が好き
L.A.B. Golfが向く人
・構え方ごと最適化してもらいたい
・フィッティングを受ける前提で道具を選ぶタイプ
・ソリッドで手応えのある打感が好き
・パッティングを根本から作り直したい
評価・口コミ|試打解説者はどう見たのか
理屈がどれだけ立派でも、打った感触が伴わなければ意味がありません。ここでは、実在が確認できる試打解説をもとに評価を見ていきます。
試打職人・石井良介プロの評価
ゴルフ専門メディア「ゴルフサプリ」で、PGAティーチングプロA級の石井良介プロが本モデルを詳細にテストしています(記事はこちら)。要点を抜き出すと、こんな評価でした。
従来のゼロトルクはシャフトが斜め(ハンドファースト方向)に入っているため構えづらかったが、本モデルはシャフトが真っすぐ入り、形状的にも視覚的にも構えづらさがなくなった。結果として「普通のセンターシャフトパターと同様に扱える」という趣旨の評価がされています。
順回転はハッキリ実感できるとのこと。スキッド段階での順回転の入り方が向上しており、「打った瞬間からボールがスーッときれいに転がって、なかなか減速しない」と表現されています。
前作Ai-ONEにあった「ツン」という弾き感に比べ、ウレタン2層になったことで奥深い打感になったと評価。「軟らかいだけでなくモッチリ感もある」「ホワイトホットを上質にした感じ」という表現が使われています。グリップについても「グリップだけほしいくらいに改良されている」との評価でした。
そして総評として、「センターシャフトに興味がある人はもちろん、ゼロトルクを扱いづらいと感じた人も再度試してみることをおすすめします」「センターシャフトのスタンダードになり得るモデル」という趣旨のコメントで締められています。

一度ゼロトルクで挫折した人にこそ、もう一回チャンスをあげてほしい。私がこの記事でいちばん伝えたいのは、そこかもしれません。
市場での評価と、カテゴリー自体の追い風
単体の評価だけでなく、市場全体の流れも見ておきましょう。
ゴルフダイジェスト・オンラインが公開した2025年のパター部門アクセス数ランキングでは、ゼロトルク系のモデルが上位に入ったと報じられています。つまり、ゼロトルクは一過性の流行ではなく、検討対象として定着しつつあるということですね。
そのカテゴリーの中で、「構えにくさ」という最大の障壁を取り除いた本モデルが注目されたのは、当然の流れだったと思います。数量限定という販売形態も、結果的に希少性を高める方向に働きました。
正直に書いておきたいデメリット・注意点
いい話ばかり並べても参考になりませんよね。ここは正直にいきます。
1. 極端なミスヒットへの寛容性は、深重心マレットに譲る可能性がある
浅重心という構造上、ヘッド後方に重量を配した深重心モデルほどの慣性モーメントは稼ぎにくいと考えられます。これは欠点というより設計思想上の「特性」ですが、トゥ寄り・ヒール寄りで大きく外すクセがある人は、そこを見て試打したほうがいいです。
2. オートマチック性が高い=自分で操作したい人には物足りない
シャフトを真っすぐ動かせばフェースが目標を向く構造なので、フェース面を自分でコントロールして球筋を作りたいタイプの人には、逆に窮屈に感じられるかもしれません。
3. 数量限定のため、欲しいモデル・長さが選べないことがある
「ロッシーが良かったのに在庫がジェイルバードだけ」という事態は普通に起こります。妥協して別モデルを買うのは、パターにおいてはあまりいい結果になりません。
4. 価格が高い
8万円台という水準は、やはり気軽ではありません。後述する別モデルとの比較も含めて、冷静に検討する価値があります。
どんなゴルファーにおすすめ?向いていない人も書きます
ここまでの情報を、判断できる形に整理しておきます。
向いている人
ショートパットで引っかけ・押し出しに悩んでいる人
ミスの多くはインパクト前後のフェースの微妙な開閉から生まれます。それを構造的に抑えてくれるので、1〜2メートルの「入れたいパット」での安心感が変わってくるはずです。
センターシャフトが好きだが、ミスヒット時のブレが気になっていた人
センターシャフトは構えやすく操作しやすい反面、打点がズレるとヘッドが回転しやすいという弱点がありました。S2S TRI-HOTは、そこをゼロトルク+浅重心で埋めにいった構造です。センターシャフトの長所だけを残す設計、と考えるとイメージしやすいと思います。
L.A.B. Golfに興味はあったが、構え方に馴染めなかった人
「ゼロトルクは試したい、でも変な構えはしたくない」というジレンマに対して、これはかなり明快な回答です。実際、試打解説でも「ゼロトルクを扱いづらいと感じた人にこそ再挑戦を」という趣旨のコメントが出ています。
前作Ai-ONE系の打感やデザインが好みでなかった人
ウレタン2層になったAi-DUALインサートの打感、ブリッジがなくなってスッキリした#7の形状など、前作からの変化は明確です。前作で引っかかっていた部分が、今作では解消されている可能性は高いですね。
「真っすぐ引いて真っすぐ出す」を信条にしている人
この設計思想と、いちばん噛み合うストロークです。
向いていない人
逆に、次のようなタイプの人は慎重になったほうがいいかなと思います。
・自分の感覚でフェースを細かくコントロールして、球筋やタッチを打ち分けたい上級者
・クラシックなブレード形状の見た目を何より愛している人
・パター選びに8万円台を投じることに納得感が持てない人
・大きくトゥ・ヒールに外すクセがあり、まずは寛容性を最優先したい人
特に4つ目に当てはまる場合は、深重心の大型マレットを先に試してみるほうが、結果的に近道になることもありますよ。
購入前に必ず確認したい3つのポイント
ここは失敗しやすいところなので、しっかり押さえておいてください。
1. 長さが自分に合っているか
このシリーズは長さの選択肢が限られています。「モデルは気に入ったけど長さが合わない」という状態で買うと、構えるたびに違和感が残ります。パターの長さは、身長というより前傾角度と目の位置で決まるものです。自分の適正がわからない人は「パター長さと身長の最適解!スコアが変わる選び方」で先に把握しておくと安心です。
2. 構えたときのヘッドの座り
ゼロトルクは「シャフトが真っすぐ」であることが性能の前提です。地面に置いたときにソールがきれいに座るか、フェースが自然にターゲットを向くか。ここは絶対に自分の目で確認してください。写真ではわかりません。
3. ストロークの意識を切り替えられるか
このパターは「フェース面をどうこうする」より「シャフトを真っすぐ動かす」意識のほうが性能を引き出せる構造です。長年フェースの開閉でタッチを出してきた人は、少し慣れが必要かもしれません。試打では10球ではなく、できれば30球ほど打たせてもらうといいですよ。
2026年の今、選択肢はどう変わった?
ここが、今このパターを検討している人にとって重要な話です。発売から時間が経ち、状況が少し動きました。
同じ思想を受け継いだ「TRTL Square 2 Square ZT」の登場
キャロウェイゴルフは、オデッセイの新作マレット「TRTL(タートル)」を2026年8月7日に発売すると発表しました。ROSSIE、2-BALL、#7、JAILBIRDに続く“第5のアイコンマレット”という位置づけです。
そしてこのラインアップの中に、ゼロトルク設計の「TRTL Square 2 Square ZT」が含まれています。公表されている内容を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | S2S TRI-HOT | TRTL Square 2 Square ZT |
|---|---|---|
| 発売日 | 2025年11月7日(数量限定) | 2026年8月7日 |
| 価格(税込) | 82,500円〜 | 69,300円 |
| ロフト角/ライ角 | 公式サイトで要確認 | 5度/72度 |
| 長さ | 34インチ(CRUISERは38インチ) | 33/34インチ |
| シャフト | STROKE LAB(120g台) | STROKE LAB 120 |
| インサート | Ai-DUAL(ウレタン2層) | Ai-STAR(ウレタン+アルミの2層) |
| 形状 | #7/JAILBIRD/ROSSIEなど従来形状 | カメをモチーフにしたミッドマレット |
注目したいのは価格です。ゼロトルク設計でありながら69,300円。S2S TRI-HOTより1万円以上安い設定になっています。インサートも、Ai-DUALの順回転性能を受け継ぎつつ、裏側にアルミを組み合わせた「Ai-STAR」に進化していて、しっかりした打感と高めの打音が得られるとされています。
では、どちらを選ぶべきか
これは好みがはっきり分かれるところだと思います。私なりの整理はこうです。
S2S TRI-HOTを選ぶ理由になるもの
・#7、ジェイルバード、ロッシーという慣れ親しんだ形状で構えたい
・タングステンを使ったマルチマテリアル構造とプレミアム感に価値を感じる
・やわらかい打感(モッチリ系)が好み
・中尺(38インチ)という選択肢が欲しい
TRTL Square 2 Square ZTを検討する理由になるもの
・価格を抑えたい
・33インチという選択肢が欲しい
・しっかりめの打感と、はっきりした打音が好み
・新しい形状に抵抗がない
どちらもゼロトルク×構えやすさという方向性は共通しています。予算と、構えたときの見え方の好み。この2軸で決めるのがいちばんシンプルかなと思いますよ。
よくある質問
まとめ:Square 2 Square TRI-HOTは買うべきか
ここまで、オデッセイ Square 2 Square TRI-HOTをいろいろな角度から見てきました。最後に、私なりの結論を書いておきます。
このパターの本質は、新しい性能を足したことではありません。「ゼロトルクを使うために、構え方を変える必要がある」という前提そのものを壊したことにあります。浅重心という力技で、普通のセンターシャフトの見た目に落とし込んだ。ここが一番の価値だと思っています。
パッティングの悩みの多くは、ストローク中の意図しないフェースの開閉から生まれます。S2S TRI-HOTは、そこから解放して「狙ったところに真っすぐ打つ」というシンプルな作業に集中させてくれる道具です。
もちろん、8万円台は安くありません。しかも数量限定だったので、欲しいモデルが手に入る保証もない。2026年8月には、同じゼロトルク思想でより手の届きやすいTRTL Square 2 Square ZTも登場します。焦って決める必要はまったくないと思います。
ただ、ひとつだけ言えることがあります。過去にゼロトルクを試して「構えにくい」と感じて諦めた人は、もう一度だけ試す価値があるということ。理由は明快で、あなたが諦めた原因そのものが、このモデルでは取り除かれているからです。

最終的な答えは、カタログの中ではなく、あなたが構えたときの視界の中にあります。
次にやることはシンプルです。まず公式サイトで現在の取り扱い状況と正確なスペックを確認する。そのうえで、可能なら実物を握って、10球ではなく30球転がしてみる。それだけで、自分に合うかどうかはだいたい見えてきます。
そして、どのパターを選ぶにしても、最後にスコアを変えるのは打つ回数です。買ったあとの練習環境まで含めて整えたい人は「「パターマット意味ない」は誤解?スコアが変わる選び方と練習法」も参考にしてみてください。道具と練習がかみ合ったとき、3パットは驚くほど減りますよ。

